JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

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[O-05] 高校生によるポスター発表

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

13:45 〜 15:15

[O05-P27] 有孔虫化石による古環境の推定

*君付 龍祐1 (1.立命館守山高等学校)

キーワード:有孔虫、知多半島、師崎層群、豊浜累層、タービダイト、群集解析

2014年以降、愛知県の片名露頭(E136°58’14”、N34°42’47”)で微化石の一つである有孔虫の化石の調査を行ってきた。ここは2013年に、名古屋大学博物館・名古屋市科学館主催の『地球教室』に参加して化石採集を行った場所である。本地層は、各層の堆積物の違いが極めて顕著なため、層ごとの化石に明らかな違いがみられるのではないかと考えた。
従来、過去の海域環境を明らかにする目的で微化石を用いる手法が有効な手段とされており(須藤,2011;谷村・辻,2012;高嶋・鈴木,2013)、こうしたこれまでの研究をもとに、今回、先の調査露頭から採取した微化石の分析を通して、当時の気候や環境等を明らかにしたいと考えた。
片名露頭で観察される地層は師崎層群に含まれ、豊浜累層に分類されている。東海化石研究会(1993)によると、師崎層群は新第三紀中新世前期~中期にかけて堆積したとされる。また師崎層群は、下位より、日間賀累層、豊浜累層、山海累層、内海累層に区分されており、いずれもその重なりは整合関係である。さらに瀬戸内中新統と呼ばれる地層群に属し、周囲の同時代の地層よりも深い海で形成されたとされている。なお豊浜累層は主に砂岩、泥岩、凝灰岩からなっており、魚類、貝類、有孔虫などの化石が多く見つかっている。
また、この地層は主にタービダイトで形成されている。一般に約200mまでの深さの浅い海(大陸棚)の堆積物ではタービダイトは形成されにくいとされていることから、これは地震などによる海底地滑りで、流れ込んだ土砂が大陸斜面に堆積したもので、このことから師崎層群の堆積した海は深海であったと考えられている(東海化石研究会,1993)。深海では波の影響を受けないため、軽い泥は時間をかけて静かに堆積し、タービダイトにより流れ込む砂は短時間で堆積する。また、凝灰岩は時間をかけて降り積もったもの、海底火山の爆発やタービダイトなどによって短時間で積もったものなどさまざまであるが、これらの堆積物が交互に重なって互層となっている。
有孔虫などの微化石は大型化石に比べて化学的に水中に溶けてなくなる確率が高いが、物理的に壊れにくい。よって堆積物中に大量に保存されるため、研究の材料として比較的入手しやすいが、これまであまり注目されることはなかった(須藤,2011)。
本研究の目的は、微化石の一種である有孔虫化石を用いて、知多半島の古環境、特に水深を明らかにすることである。師崎層群では、これまでに有孔虫化石を用いた研究は行われているものの、特に水深と関連付けた研究はこれまで行われていない。なお大型化石を用いた研究では水深200-600m程度(Shikama & Kase,1976)や水深500m以上(蜂矢ほか,1988)などが報告されている。
古環境の推定には底生有孔虫による群集解析を用いた。その結果、水深は200-2000mと推定された。また堆積している土砂は0-50mの内湾を起源とするもので、1754万年前より以前に堆積したと考えられる。さらに上層部には暖流、中層部には寒流が流れていた可能性が示唆される。