JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ] ポスター発表

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[O-05] 高校生によるポスター発表

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

13:45 〜 15:15

[O05-P42] 福井地震断層の探究Ⅴ ~福井平野の揺れは?~

*中山 怜那1、*上田 瑞貴1、* 侃1、南谷 浩紀1 (1.福井県立藤島高等学校)

キーワード:地震、クラック、トラップ波

私たちは、福井地震を引き起こした福井平野東縁断層帯について研究をしている。福井県はかつて大きな地震が起こったこと、福井地震断層等多くの活断層を抱えていることから、福井県や周辺で起きる地震を分析することにより、福井平野の地下構造や地震動のメカニズムを解明したいと考えた。
S波着震時の水平面内の速度ベクトルは、ある一定の方向を顕著に示すことが分かっている。この方向がS波の最初の振動方向であり、速度ベクトルをグラフ化したホドグラフより読み取ることができる。この振動方向の情報を藤島、金津、丸岡、坂井、三国の各高校について蓄積させることで、傾向を知りその原因や理由を推定することが出来る。
各高校のS波の最初の振動方向について図より分析した。
藤島高校は、過去の研究より、藤島の直下に何らかの特徴的な構造があることが分かってきた。今年度はS波の最初の振動方向がイレギュラーな方向を向いているケースが見つかり、二つの仮説を立てることにした。一つ目は藤島の地下構造は安定しているという仮説である。偶然偏った方向の波しか観測されなかった。二つ目は藤島の地下には閉口クラックが南北方向に存在するという仮説だ。昨年の考察より、このような、イレギュラーな振動方向が見られるときはクラックが開いている可能性があると考えられる。全体的には西北西-東南東に偏りが見られる。
金津高校は過去の研究より直下に南北の閉口クラックがあることが判明している。また、イレギュラーな方向のものは見られないので、地震が起こった日はすべてクラックが閉じていたと考えられる。
丸岡高校は、応力の向き、つまり北西-南東の主圧力軸と一致し、クラックの存在を示していない。過去の研究と同じ結果である。この観測地点は断層帯の東の外側に位置している。
坂井高校は、北西-南東方向に偏った波のみがおおよそ観測されている。過去の研究と異なってしまったが、イレギュラーな方向のものが存在していることより、クラックの発達が充分ではないと判断した。
三国高校は、イレギュラーな振動方向が見られるときはクラックが開いている可能性があると考えられる昨年同様、偏りは見られない。三国付近の圧力が安定していない、つまり主圧力軸が一定でない、と考えている。これは、東尋坊など地形的特徴にも現れている。
クラックとは、地盤に生じた割れ目であり、クラックの集合体が断層になる。閉口クラックは閉じた状態のクラックである。開口クラックは、クラックが開き、そこに水などの液体の不純物が侵入した状態のものである。
地震が発生した時の両クラックの状態の変化について、割れ目は南北方向を向いているとして、別々に説明する。閉口クラックは東西方向に振動するS波は影響なく、南北方向に振動するS波は割れ目の摩擦により減速する。開口クラックは東西方向に振動するS波はクラックと垂直な振動面として伝わってくる。液体の部分を通過するときには、液体部分は波を伝えないため、波の通過が遅くなる。一方南北方向のS波は、閉口クラックと同じであるが、東西方向程減速しないので、南北方向に顕著な波が先に確認されるはずである。
トラップ波という現象も確認することが出来た。断層破砕帯の存在するところは屈折率が普通の地盤よりも大きい。S波が入破砕帯を横切るためには射角はできる限り小さくなる必要があるが、破砕帯と並行にやってきた波の入射角が臨界角よりも大きくなることは難しい。よって、波が光ファイバーのように多重反射し断層破砕帯を抜け出すことができず、一度S波が到着した後にも同じようなサイズの波が確認できる現象である。トラップ波が認められる地震として今年の研究でさらに確認したものは、二つある。一つ目は根尾村付近を震源とする地震だ。2014.9.20発生、M1.9北緯35.8931東経136.3784震源の深さ4.0㎞。坂井と金津においてS波の到着時刻よりも後に、到着時と同じくらいの大きさの揺れが確認できる。藤島高校は継続した波形が小さいものの認められるが、これは、地盤の特性が原因と考えている。
二つ目は池田町付近を震源とする地震だ。2016.1.13発生、M2.0北緯36.0510東経136.3755震源の深さ3.3km。金津において顕著な波が観測されていることがわかる。坂井はクラックの発達が不十分なため、波の速度が十分遅くならなかったため、充分大きく発達できなかったと考えている。丸岡もS波の後続波も多少認められるが、これは丸岡が震源にもっとも近いためだと考えている。藤島は、坂井や金津のようなトラップ波のようなものが顕著ではない。藤島高校は、東縁断層帯の西側の外側に存在しているからである。