JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-RD 資源・鉱床・資源探査

[S-RD39] [JJ] 資源地質学

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、実松 健造(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループ)、高橋 亮平(秋田大学大学院国際資源学研究科)、座長:高橋 亮平(秋田大学国際資源学部)

11:15 〜 11:30

[SRD39-08] 伊豆小笠原弧ベヨネース海丘におけるチムニー鉱石中の銀に富む硫化鉱物の鉱化作用

*川口 真治1米津 幸太郎1ティンディル トーマス1石橋 純一郎2島田 和彦2野崎 達生3 (1.九州大学 工学部、2.九州大学 理学部、3.国立研究開発法人 海洋研究開発機構 )

キーワード:ベヨネース海丘、チムニー、銀の硫化鉱物

我が国周辺海域に賦存が知られている海底熱水鉱床は他国の資源政策に影響しない資源であり、開発が可能になれば需要の大半を海外に依存している金属鉱物資源の新たな供給源として期待される。伊豆-小笠原弧に属するベヨネース海丘は島弧・海底火山である。陸上の黒鉱鉱床の鉱石平均値、同海丘に隣接する明神礁カルデラ鉱石の平均値と比較すると前者の平均値よりも金と銀の品位が高く、また後者の平均値とは概ね同等の品位を示すことが知られており、主要元素の品位は金 (4.635 ppm), 銀 (354 ppm), 銅 (0.406 wt%), 鉛 (0.252 wt%), 亜鉛 (11.841 wt%)である。本研究では同海丘から採取された熱水噴気孔から噴出する熱水によって形成されたチムニー鉱石と、それが物理的要因によって崩壊して形成したとされるマウンド鉱石の関係及び、チムニー鉱石中の銀に富む硫化鉱物の鉱化作用を議論することを目的とした。

肉眼観察、顕微鏡観察、電子マイクロアナライザー(EPMA)の順に巨視的から微視的に分析を行った。黒鉱鉱床の鉱石中にも確認される分類であるが、筒状かつ成長軸は外側から内側に延びていると考えられる形状で外側から順に表面に付着するマンガン酸化物、重晶石を多く含む白色部分(G1)、閃亜鉛鉱・方鉛鉱を主とする硫化物を多く含む灰色部分(G2)、G2と同じ硫化鉱物を主とするが黒色多孔質で重晶石の大きな結晶が確認される部分(G3)に大別できることが確認された。また、先行研究の流体包有物の均質化温度より重晶石(G1)の形成温度が150-215℃、閃亜鉛鉱(G2-G3)の形成温度が205-225℃であることが知られている。加えてEPMAの特性X線像よりBaはG1とG2に広く分布するが、G3では晶洞内のみ重晶石の分布が確認された。またG1-G2には黒鉱鉱床の黒鉱にあたる閃亜鉛鉱・方鉛鉱・黄銅鉱が多く観察されたことより、黒鉱鉱床の鉱石と現在海底面に存在するチムニー鉱石とマウンド鉱石の成長過程・鉱物組み合わせが類似していることが明らかとなった。特に銀に富む硫化鉱物は、EPMAの定量分析により重晶石と閃亜鉛鉱と共生して銀・銅・鉛を含む硫化鉱物として確認された。加えて、銀はG2内のG1-G2の境界に分布することと、チムニー鉱石の形成温度は成長軸に沿って上昇することから、銀・銅・鉛を含む硫化鉱物は200℃付近で形成されたと推測される。よって以上の点より、黒鉱鉱床の鉱石に対してベヨネース海丘のチムニー鉱石とマウンド鉱石は主要元素 (銅, 鉛, 亜鉛) の濃集は陸上の黒鉱鉱床の鉱石と類似しているが、黒鉱鉱床の鉱石よりも品位の高い金・銀が見られた。特に金に比べ、銀の品位が高いチムニー鉱石中に確認される銀を含む硫化鉱物の分布から200℃付近の熱水から沈殿したと見られる。その濃集場所は主に重晶石からなる硫酸塩と主に黒鉱 (閃亜鉛鉱・方鉛鉱・黄銅鉱) からなる硫化物の境界付近に位置し、重晶石と閃亜鉛鉱と共生していることが明らかとなった。