JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] [EJ] 活断層と古地震

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、杉戸 信彦(法政大学人間環境学部)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)、安江 健一(日本原子力研究開発機構)

[SSS12-P06] 石灯籠群の建立年代分布に見える歴史地震の影響

*加藤 護1 (1.京都大学大学院人間・環境学研究科)

キーワード:歴史地震、強震動

日本の寺社の境内に立つ石灯籠は地震の際に転倒・破損することがある。例えば2014年11月の長野県北部の地震では善光寺(長野市)の境内に建つ石灯籠に大きな被害が出た。歴史地震でも石灯籠の被害があったことは古文書記録に残っており、その記録は震度分布を知り震源断層を推定するなどに用いられている。石灯籠には建立年代などの文字が刻まれており、古い石灯籠の中には歴史地震を経験し現在も建つものがある。これは石灯籠群が歴史地震の記録媒体であることを意味する。石灯籠群を調査することにより歴史地震の発生や被害など文書記録の情報を実体で確認できることができる可能性がある。

本発表では、多くの石灯籠が集中して現存し、また顕著な歴史地震を経験したことが分かっている3つのサイトにおける石灯籠の建立年代分布・破損状況と歴史地震活動の関係を整理する。われわれがこれまでに北野天満宮(京都市)、石清水八幡宮(京都府八幡市)、善光寺(長野市)で行った石灯籠の調査結果(加藤・日岡[2015, 2016a, 2016b])の結果を総括し、歴史地震研究において石灯籠群を活用することは可能であるかを検討する。古文書記録などにより分かっている歴史地震の時系列と、現存する石灯籠の年代分布や破損状況等から地震の影響が石灯籠群に刻まれているかを確認する。また石灯籠の増減や破損は人間活動の影響を受けるためこの視点でも検討する。

得られた知見は以下のように整理される。境内の石灯籠年代分布をリセットしたと考えられる歴史地震がある。これは極めて大きな被害が生じ寺社の大半の石灯籠が撤去された可能性を示す。また地震後に石灯籠の建立が増えたと考えられる事例がある。これは復興過程を見ている可能性がある。個々の地震の揺れの特徴や被害の大きさを石灯籠群のみから知ることは困難であり、石灯籠群は古文書を補助するデータという位置付けがよいであろう。