JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月22日(月) 09:00 〜 10:30 コンベンションホールA (国際会議場 2F)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:熊谷 博之(名古屋大学大学院環境学研究科)、座長:森田 裕一(東京大学 地震研究所)

09:00 〜 09:15

[SVC47-01] ネバドデルルイス火山(コロンビア)の監視強化と地震波形解析から推定されるマグマシステム

*熊谷 博之1前田 裕太1ロンドニョ マカリオ2ロペス クリスチャン2 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.コロンビア地質調査所)

コロンビアのアンデスに位置するネバドデルルイス火山は活発な噴火活動を続けている。この火山の監視強化を目的に、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)のコロンビアプロジェクトでは、広帯域地震計等の機材を新規に設置するとともに、リアルタイム地震監視システムの導入を行っている。さらに走時トモグラフィー法や波形インバージョン法を用いた地震波形の解析技術の導入も進めている。高周波地震波振幅を用いた震源決定(ASL)システムが2016年3月から稼働しており、 volcano-tectonic (VT) 地震、very-long-period (VLP) イベントおよび微動の系統的な震源決定が行われている。本発表ではネバドデルルイス火山の地震観測網および地震監視システムの概要を述べるとともに、ASLによる震源決定、走時トモグラフィーによる地震波速度の3次元分布、波形インバージョンによるVLPイベントのメカニズム等の結果に基づき、本火山のマグマシステムについての議論を行う。
 ネバドデルルイス火山には12点の広帯域地震計および3点の短周期地震計観測点が設置されており、seedlink によりリアルタイムで波形データが取得されている。低周波数(0.3-1 Hz)の地震波形振幅に基づいて自動的にトリガーされたイベントおよび微動について、5-10 Hz の高周波振幅を用いたASLシステムにより震源位置が自動的に推定される。推定された震源位置や震源振幅に基づいた地震マグチニュードの推定値などの情報はウェブにより閲覧でき、閲覧画面からは手動による再解析ができる。波形インバージョンでは地形を考慮したグリーン関数を用いて、シングルフォースとモーメントテンソルを仮定したメカニズム推定が可能である。走時トモグラフィーは、差分法による波線追跡および走時計算に基づいて3次元のP波およびS波速度構造のインバージョンが行える。
 ASL法による震源推定をする上で必要となる火山の非弾性構造を表すQ値と各観測点のサイト増幅係数は、VT地震の初動走時から推定した震源位置とASL法による震源位置の差が最小になる値として推定した。これらの値を用いたASL法による結果は、VT地震が火口を挟んで北側と南側で発生しており、微動およびVLPイベントの震源は火口から北西の深部に向かって伸びる分布を示している。いくつかの微動では、この分布に沿って深部から火口へ向かって移動する震源が推定された。VLPイベントの波形インバージョンの結果は、北西に傾斜したクラックの体積変化を示すメカニズムを示した。微動およびVLPイベントが発生している震源領域は、高いVp/Vsであることが走時トモグラフィーから推定され、この領域での流体の存在を示唆している。これらの結果は、この震源領域が板状の割れ目を通してマグマが上昇する火道であり、噴火に至る破砕過程に伴って微動およびVLPイベントが発生していると解釈できる。