日本畜産学会第128回大会

質疑応答(シンポジウム)

​[市民公開シンポジウム1]




[市民公開シンポジウム1]

・飼料給与面からの肥育豚における暑熱対策
Q:アミノ酸添加試験でトリプトファンは必ず含めないと効果は期待できないでしょうか?他の3つのアミノ酸と比べて添加コストが高いです。
A: 本成果はトリプトファンも含めた4種の必須アミノ酸を強化した飼料を利用して得られた成果であり、トリプトファンは含める必要があります。
ただ、トリプトファンの要求量は低く、150%まで強化しても0.02%増加する程度であり、飼料価格においても700円/tのコスト増で抑えられるため出荷日齢が1~2日程度早くなることで採算が取れます。
実際に、JAさが養豚部会の肥育後期用飼料の夏季飼料として利用されていますが、毎年度飼料代増における効果を検証しながら更新しています。


Q:焼酎粕中のポリフェノールは、豚肉に移行しますでしょうか?近年、「ポリフェノールパラドックス」といって、生体利用性が低いポリフェノールが吸収されることなく腸管で作用して神経系を介して全身に効果を与える説が提唱されており、豚でもそのような効果があるのか関心があります。
A:ポリフェノールは豚肉には移行しませんので、ポリフェノールパラドックスの説が強いと考えています。肉質改善に係る技術開発は継続しており、ポリフェノール含量の高い飼料原料を給与することでドリップロスが改善されることが確認されています。今後は、作用機序含めて検証する必要があると考えます。

Q:豚の飼料にアミノ酸や油脂を添加すると採食量は増えるのでしょうか?
A:暑熱条件下で採食量が減ることで不足する栄養素を補うためにアミノ酸や油脂を添加しているため、アミノ酸や油脂を添加しても採食量は増えません。

・夏季暑熱による乳牛の生産性低下の科学的理解と対応策の展望
Q:Woodの式で表される曲線同士を統計的に比較するような統計はないのでしょうか。もしご存知でしたら教えてください。
また、この実験で個体ごとの乳量の差はどのようにして標準化して解析しているのでしょうか?
A:曲線同士を全体的に比較する方法は、申し訳ありませんが、存じておりません。曲線の形を比較するとすれば、モデルの出力値をつかって、最大乳量や、最大乳量となる分娩後日数、泌乳の持続性を表す数値を計算して比較する方法があるかと思います。
個体ごとの乳量の差は、標準化しておりません。生の乳量をそのまま使用しております。乳量と関連する様々な形質があるかと思われますので、慎重に考えるべきところと思います。

Q:最後の暑熱対応策として搾乳牛のみならず、乾乳牛や育成牛の環境制御も重要とのことですが、具体的にはどのような方法が考えられますでしょうか?搾乳牛のようなミスト処理以外に何かありますでしょうか?
A:先生のおっしゃるとおり、乾乳牛、育成牛の畜舎でも、送風機やミストなどの設置が求められ、可能であればビタミン等の飼料添加物の検討も必要となると思います。費用の問題から、搾乳牛と同等の対策ができない場合もあるかと思いますが、暑熱が分娩後の乳量や繁殖に及ぼす影響を考慮することで、その必要性を改めて検討することが必要と考えます。


・現代ブロイラーの暑熱対策と生菌剤を用いた夏場生産性の改善
Q:産肉量は胸肉ともも肉では暑熱ストレスの影響はどちらで大きいでしょうか。
A:暑熱ストレスで個体重が減少すれば胸肉の歩留が下がる傾向があるものの、経済的にはもも肉の影響が大きいです。

Q:2点質問させてください。
  1. 全期無薬飼育の結果として考えて良いのでしょうか?
  2. 腸内細菌は腸管のどの部分の細菌叢を測定しているのでしょうか?

A:1. 23日令までは抗菌性物質(第1、3欄)を添加しております。
   2. 初期は腸管全体より、2週令以降は新鮮な糞便を採取しております。

Q:カルスポリンやファインラクトの効果を紹介していただきましたが、両方の併用効果については検証されていないのでしょうか?
A:試験区、対照区共にカルスポリン添加しており、試験区が併用効果の検証となります。今回の試験ではPS(生産数値)10ポイント試験区が良い結果となりました。

Q:ファインラクト添加試験について、一部、添加区にも関わらず大腸菌数が対照区よりも多いという結果になりましたが、これについてどのような要因が考えられますでしょうか。
A:42日令での腸内細菌の結果において試験区が悪化している部分と思われますが、試験区が1回目の出荷後減耗が高くなり、ストレスを受けた結果と思っております。ただストレスのピークは28~36日令と思っておりその間の腸内細菌叢の結果は試験区が良く生菌剤の効果があった可能性はあると思っております。

Q:鶏に生菌製剤を投与して大腸菌占有率が大きく減少したとのことですが、そもそも、最初のところで大きく差があったのはなぜでしょうか?
A:雛を入れる時に飲水用のポット及びニップル(給水器)が影響していると思われます。試験当時、水の細菌数を調査したところ8時間後にはポットの水の一般細菌、大腸菌の数値が高かった結果となりました。またニップルにおいても流水している鶏舎と通常使用している鶏舎で細菌数に差がありました。現在は水の流水、消毒の強化等で改善していると思われます。


・株式会社ニチレイフレッシュファームにおける暑熱ストレスによる生産成績への影響とその対策
Q:産肉量は胸肉ともも肉では暑熱ストレスの影響はどちらで大きいでしょうか。
A:餌切り(断食)を行うため鶏の重量は通常よりも少なくなります。純和鶏はもともとむね肉が付きにくい鶏種のため、むねとももを比較した場合もも肉への影響が大きいです。

Q:重曹と塩化ナトリウムの併用を行なっているのでしょうか?Na濃度が高くなりすぎませんか?
A:併用を行っていますが、原液をそのまま使用している訳ではなく、500倍程度に希釈し飲水添加しています。

Q:鶏の体熱放散を促すために鶏舎を頻繁に巡回し、鶏を動かせるとのことですが、運動させるとかえって熱産生を助長するのではないでしょうか?送風や細霧処理の方が効果的と思いますが、いかがでしょうか?
A:巡回の目的は鶏を立たせることです。暑いと座り込み床面と腹部の間に熱が籠り、熱死するため籠った熱を分散させるために巡回を行っています。巡回のみでは効果が無く、同時に送風・細霧やその他暑熱対策を行う必要があります。

Q:石灰をアスファルトに散布すると鶏舎内の温度上昇が抑制できるメカニズムを教えていただけますと幸いです。
A:アスファルトは黒いため日光を吸収しアスファルトの温度が上昇します。石灰を散布することで白くなるため日光を反射し温度上昇を抑える事ができます。鶏舎内送風する際に外気を取り込むため暑くなった外気を取り込まないようにするためです。