第96回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

医療安全

医療安全

座長:内田 荘平(福岡看護大学)

[20] 医療機器に関連した医療事故報告の重要性

渡邊 雅俊 (国家公務員共済組合連合会東海病院 臨床工学科)

【背景・目的】
当施設における医療機器のインシデント・アクシデント(医療事故)報告は,第5次医療法改正により医療安全管理体制が示された2007年の翌年をピークに減少傾向をたどり,直近の4年間は皆無に等しい.その一方で,このような報告は再発防止とインシデントが医療事故に発展するのを防ぐ効果が期待できる.本研究の目的は,病院経営のリスク管理の観点から,医療機器に関連した医療事故報告の重要性に関する検証を試みることである.
【方法】
1)日本医療機能評価機構の公開データから医療機器に関連した医療事故情報を抽出し,実態分析とともに報告件数と事故の程度に係る相関分析をした.2)裁判所の公開データから医事関係訴訟事件を抽出し,実態分析とともに医療事故情報の報告件数と医事関係訴訟事件に係る相関分析・回帰分析をした.
【結果】
1)医療機器に関連した医療事故は6.7%が死亡事故であり,事故の概要のうち治療・処置に次いで2番目に高かった.また,医療事故情報の報告件数と事故の程度の関連性は,「障害残存の可能性なし」,「障害なし」といった事故の程度が軽いほど強い正の相関関係があった.2)医療事故情報の報告件数と医事関係訴訟事件(訴訟事件数,判決率,認容率)の関連性は,医療訴訟の工程が進むほど強い負の相関関係があった.とくに認容率においては,単相関係数-0.873と強い関連性があり,回帰式はy=-0.006x+40.042が認められた.
【考察】
医療技術の高度化・複雑化を背景に,医療機関における医療事故が相次いでおり,医療機器に関連した安全管理体制の確保は重要性を一層増している.焦点を当てた医療事故報告は,膨大な事故情報(とくに軽微な事故)の研究により医療安全システムを構築し,これが人命に関わる重大な事故,ひいては,病院経営に直結する医事関係訴訟事件を抑制できているかもしれない.さらに,明確な因果関係を実証することを今後の課題としたい.