第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション01(I-PD01)
臨床につながる胎児心機能・胎児循環不全評価方法

2021年7月9日(金) 10:40 〜 12:10 Track2 (Web開催会場)

座長:石井 徹子(千葉県こども病院 循環器内科)
座長:金 基成(神奈川県立こども医療センター 循環器内科)

[I-PD01-5] 二次元スペックルトラッキング法によるストレイン解析を用いた胎児徐脈性不整脈の診断法

林 泰佑, 進藤 考洋, 三崎 泰志, 小野 博 (国立成育医療研究センター 循環器科)

キーワード:ストレイン解析, 胎児不整脈, 胎児心エコー検査

【背景】胎児不整脈の診断には、Mモードでの心房・心室壁運動記録、上大静脈・上行大動脈のパルスドプラ波形同時記録が広く用いられている。胎位によっては適切な断面・カーソル位置の設定が難しいことがある。
【目的】ストレイン解析を、胎児徐脈性不整脈の診断に応用する。
【方法】不整脈のない18症例(在胎週数31.7±3.7週)の胎児心エコー四腔断面像(心拍数144±10 bpm)を用いてストレイン解析を行った。左室と右房の心内膜をトレースして連続3心拍のストレイン曲線およびストレインレート曲線を得て、正常リズムにおける心周期の時相を同定した。徐脈性不整脈の3症例も同様に解析し、正常リズムの場合と比較して不整脈の診断を試みた。
【結果】正常リズムの胎児では、左室のストレインレート曲線で、急速駆出期に相当する収縮期ストレインレートが最大となる時相(S波)が同定できた。右房のストレインレート曲線では、拡張期に心房収縮期に相当する大きなピーク(A波)が同定できた。A-S間隔は170±19 msecであった。
<徐脈症例1>在胎24週、胎児心拍数は73~103 bpm、下大静脈欠損。ストレイン解析では、S波とA波が一対一に対応し、A-S間隔は164 msecであり、洞性徐脈と診断した。
<徐脈症例2>在胎28週、胎児心拍数78 bpm。ストレイン解析では、A-S間隔は212 msecで、S波の72 msec後にもう一つの心房収縮波を認めた。房室ブロックを伴う心房性期外収縮の二段脈と診断した。
<徐脈症例3>在胎34週、胎児心拍数51 bpm、母体抗SS-A抗体陽性。ストレイン解析で同定したA波から心房レート154 bpmと算出した。3:1伝導の房室ブロックのようにもみえたが、S波とその直前のA波から算出したA-S間隔は119~128 msecと短かった。完全房室ブロックと診断した。
【考察】左室および右房のストレインレート曲線から、S波とA波が同定できる。その対応関係とA-S間隔を分析することにより、胎児徐脈性不整脈の診断が可能である。