第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション02(I-PD02)
小児肺高血圧に対する私たちの新しい取り組み(早期発見/治療、診断/鑑別、基礎研究、多職種連携など)

2021年7月9日(金) 13:30 〜 15:00 Track2 (Web開催会場)

座長:高月 晋一(東邦大学 医学部附属大森病院 第一小児科)
座長:石田 秀和(大阪大学医学部附属病院 小児科)

[I-PD02-1] 単球由来ヒト内在性レトロウイルスは、受容体TLR4とMCAMを介した内皮間葉転換によりマウス肺高血圧を誘発する

大槻 祥一郎1,2, Taylor Shalina2, Li Dan2, Moonen JR2, Marciano David2, Harper Rebecca2, Cao Aiqin2, Wang Lingli2, 澤田 博文1, 三谷 義英1, Rabinovitch Marlene2 (1.三重大学 小児科, 2.スタンフォード大学 小児循環器科)

キーワード:肺高血圧, HERV, 内皮間葉転換

【背景】近年、肺動脈性肺高血圧(PAH)患者に於ける循環血液中単球及び肺動脈外膜に浸潤したマクロファージで、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質(HERV-K dUTPase)が高発現していることが報告された。さらに組み替えHERV-K dUTPaseを用いた実験で、HERV-K dUTPaseが肺動脈内皮細胞(PAEC)のIL6を増加させ、ラットの肺高血圧を誘発した。【目的】PAHに於ける単球由来HERV-K dUTPaseのPAECに対する作用機序を解明する。【仮説】単球由来HERV-K dUTPaseは細胞外小胞(EV)を介してPAECの内皮間葉転換(EndMT)及び炎症を誘発する。【方法】HERV-K dUTPaseを過剰発現させた単球(THP1細胞)とPAECを共培養し、細胞表現型、遺伝子発現の変化を評価した。また超遠心分離機により単球培養液に放出されたEVを単離し、Western BlotでHERV-K dUTPaseを定量した。HERV-K dUTPaseを含む単球由来EVをマウスに5週間経静脈投与し、PAECに於ける炎症、EndMT、肺高血圧の誘発の有無を、免疫染色、心臓カテーテル検査で評価した。作用機序に関して、HERV-K dUTPaseの候補受容体(TLR4、MCAM)をsiRNAで抑制したヒトPAECに対して組み替えHERV-K dUTPaseを3日間投与し、EndMT指標(SNAIL)及び炎症指標(IL6)を評価した。【結果】HERV-K dUTPaseを過剰発現させた単球と共培養したPAECは、平滑筋様の形態変化を示し、遺伝子レベルでSNAILの増加、VE-cadherin及びPECAM1の減少、αSMA及びSM22αの増加を認めた。HERV-K dUTPaseを過剰発現させた単球培養液より単離されたEV内に、濃縮されたHERV-K dUTPaseを認めた。HERV-K dUTPaseを含む単球由来EVを投与されたマウスは、EndMT、PAECの炎症、肺高血圧が有意に誘発された。TLR4とMCAMをノックダウンしたヒトPAECでは、HERV-K dUTPaseによるSNAIL、IL6の発現が抑制された。【結論】単球由来HERV-Kタンパク質は、TLR4、MCAMを介してEndMT、炎症、肺高血圧を誘発した。