第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション03(I-PD03)
川崎病冠動脈障害の管理:新たな時代へ

2021年7月9日(金) 10:40 〜 12:10 Track4 (Web開催会場)

座長:髙橋 啓(東邦大学医療センター大橋病院 病理診断科)
座長:小林 徹(国立成育医療研究センター 臨床研究センター データサイエンス部門)

[I-PD03-4] 川崎病後遠隔期おける冠動脈内腔壁不整が示すもの:冠動脈壁イメージングからの検討

大橋 啓之1, 三谷 義英1, 寺島 充康2, 坪谷 尚季1, 大矢 和伸1, 大槻 祥一郎1, 淀谷 典子1, 澤田 博文1, 佐久間 肇3, 土肥 薫4, 平山 雅浩1 (1.三重大学大学院 医学系研究科小児科学, 2.豊橋ハートセンター循環器内科, 3.三重大学大学院医学系研究科放射線医学, 4.三重大学大学院医学系研究科循環器・腎臓内科学)

キーワード:川崎病, 画像診断, 長期管理

【背景】退縮瘤における急性冠症候群が川崎病遠隔期の若年成人で散見され,冠動脈内膜病変の心イベントへの関与が示唆されている.退縮瘤の冠動脈造影(CAG)所見において,血管壁不整を時に認めるが,その意義や管理指針は明らかではない.【仮説】川崎病後遠隔期におけるCAG上の壁不整所見は,血管壁イメージング上の動脈硬化類似病変と関連する.【方法】急性期に6mm以上の冠動脈病変を伴い,急性期から15年以上経過し光干渉断層法(OCT)と造影多列CT(MDCT)による血管壁イメージングを行っている症例を対象とした.冠動脈病変の診断は,急性期のエコーと回復期のCAGから行い,病初期から正常(NS)と退縮瘤(RAN)の区域で検討した. CAG上の壁不整(IRR)区域は「狭窄を伴わない壁の不整が複数造影にて確認された区域」,動脈硬化類似病変はOCT上の石灰化内膜/壁在血栓/ruptured plaqueもしくはMDCT上の石灰化内膜病変と定義した.評価は区域毎に行い,OCT,MDCTで評価不能であった区域は除外した.【結果】対象は全8人(男:50%),年齢は中央値24.5歳(IQR:21.6-30.1),KD後経過年数は中央値23.1年(IQR:20.4-28.7),計27区域(NS 8区域,RAN 19区域)で評価可能であった.IRRを認めない区域(nIRR)は17,IRRを認める区域(pIRR)は10で,OCTによる最大内膜壁厚は,nIRR 中央値270μm(IQR:220-350),pIRR 310μm (290-360)であった(p=0.137).動脈硬化類似病変は,OCT上,nIRR 2/17区域とpIRR 6/10区域(Accuracy 0.778, PPV 0.600, NPV 0.882)に認め,CT上,nIRR 1/17区域とpIRR 3/10区域(Accuracy 0.703, PPV 0.300, NPV 0.941)に認めた.【結語】pIRR区域において,OCT上は60%,CT上は30%の区域に動脈硬化類似病変を認めた.IRRは,血管壁イメージング上の動脈硬化類似病変の陰性適中率が高く,退縮瘤におけるCAG上の壁不整は,リスク階層化に有用と思われた.