The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Symposium

シンポジウム03(I-SY03)
心筋症の基礎と臨床の架け橋を探る

Fri. Jul 9, 2021 9:00 AM - 10:30 AM Track3 (Web開催会場)

座長:武田 充人(北海道大学 医学研究院 生殖・発達医学分野 小児科学教室)
座長:廣野 恵一(富山大学医学部 小児科)

[I-SY03-3] Novel manipulation of AT1 receptors to alleviate overt infantile heart failure due to severe dilated cardiomyopathy

山田 充彦 (信州大学 医学部 分子薬理学教室)

Keywords:拡張型心筋症, 乳幼児期発症顕性心不全, 治療薬開発

【背景】重症型拡張型心筋症(DCM)は往々に乳幼児期に顕性心不全(IHF)を発症し、早期心移植を必要とする。補助循環装置の発展を考慮しても、これら患者のIHFを軽減し、安全な移植待機時間を延長できる新薬の開発が必要である。【目的】遺伝子改変マウスでの基礎研究を基に、新しいIHF治療法を考察すること。【方法】ヒト重症型DCMモデルマウス(cTnTΔK210 mouse)のホモ接合体(Homo)または野生型同腹仔(WT)に、AT1アンジオテンシン受容体(AT1R)の下流の2つの細胞内信号経路(G蛋白質+βアレスチン)の双方を抑制する「AT1R阻害薬(ARB)」、またはG蛋白質経路を抑制するがβアレスチン経路を刺激する「βアレスチンバイアスAT1Rアゴニスト(BBA)」を、生後0日(P0)から連日皮下投与した。【結果】Homoは離乳期(P20)までに、80%の個体が両心室不全により死亡した。ARBもBBAも心肥大を改善しなかったが、BBAのみが心機能低下の進行を遅らせ、臓器うっ血・哺乳量減少・体重増加不良・低アルブミン血症・低血糖を有意に改善し、離乳期までの死亡率を半減した。一方ARBは腎不全を生じ、離乳期までにWTでも60%の個体を死滅させた。これは腎葉間・輸入動脈の血管平滑筋細胞異常増殖による血管内腔狭窄、それに伴う糸球体血流量低下、さらに尿管蠕動能低下による髄質委縮によるものと思われた。【考察】BBAは、AT1R/βアレスチン経路を刺激して心機能低下を遅らせ、重症型DCM患者の安全な移植待機時間を延長できる可能がある。一方ARBはこの経路を抑制するので心機能を改善せず、さらに腎の子宮外環境適応を抑制する危険性があると思われた。【結論】BBAの生後早期からの継続的投与が重症型DCMのIHFを有効に軽減させる可能性があり、その創薬と臨床応用を急ぐ必要があると思われた。