第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム04(I-SY04)
小児循環器領域のゲノム医学

2021年7月9日(金) 10:40 〜 12:10 Track3 (Web開催会場)

座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部小児科)
座長:横山 詩子(東京医科大学細胞生理学分野)

[I-SY04-5] 一細胞シークエンス解析による咽頭弓中胚葉から心筋・骨格筋細胞への細胞系譜解析と転写因子Tbx1による咽頭弓中胚葉細胞の分化制御機構の解明

能丸 寛子 (アルバートアインシュタイン医科大学)

キーワード:single cell RNA-seq, Second heart field , Cardiac progenitor cells

22q11.2欠失症候群(DiGeorge症候群)の主要な原因遺伝子である転写因子TBX1 (T-box transcription factor 1) は咽頭弓中胚葉、特に二次心臓領域(second heart field; SHF) に高発現している。SHF 細胞は心臓の流出路だけでなく咀嚼筋や表情筋を含む鰓弓筋へと分化するが、その詳細な分化経路は明らかとなっていなかった。また、Tbx1欠損マウスは動脈幹遺残症や鰓弓筋の形成不全などが観察されるが、Tbx1のSHFにおける機能の詳細は明らかとなっていなかった。
本研究では中胚葉由来細胞をラベルしたMesp1-Cre;GFPfloxマウスの初期胚を用いてscRNA-seqを行い、心筋細胞と鰓弓筋細胞に加えて、両者の中間となるような遺伝子発現プロファイルを持ち、両者への分化経路を持つ細胞集団(Multi-lineage progenitor cells; MLP)を同定した。また、マーカー遺伝子(Aplnr, Nrg1)の発現解析により、MLPは咽頭弓後外側に存在することを明らかにした。
さらに、咽頭弓中胚葉分化におけるTbx1の機能を明らかにするために中胚葉特異的Tbx1 欠損マウス(Mesp1-Cre;Tbx1flox/flox;GFPflox)を用いてscRNA-seqを行いコントロールと比較したところ、ノックアウトマウスではMLPの割合が増加し、分化後の心筋細胞と鰓弓筋細胞の割合が減少していた。ノックアウトマウスのMLPにおいて有意に減少している262遺伝子についてGene Ontology解析行ったところ、心筋細胞や骨格筋細胞の発生に関連する遺伝子群が減少していた。これらの結果から、Tbx1は咽頭弓中胚葉内でMLPから心筋および鰓弓筋へと分化の成熟に必要だと考えられる。