The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Presidential Session

会長要望セッション05 パネルディスカッション(I-YB05)
乳児特発性僧帽弁腱索断裂の病態解明と適切な治療

Fri. Jul 9, 2021 9:00 AM - 10:30 AM Track4 (Web開催会場)

座長:佐川 浩一(福岡市立こども病院 循環器科)
座長:鍵﨑 康治(大阪市立総合医療センター 小児心臓血管外科)

[I-YB05-3] Acute rupture of chordae tendineae of the mitral valve in infants-experience at a single institution

上田 秀明, 渋谷 悠馬, 水野 雄太, 池川 健, 市川 泰広, 河合 駿, 小野 晋, 金 基成, 柳 貞光 (神奈川県立こども医療センター 循環器内科)

Keywords:僧帽弁腱索断裂, 人工弁置換術, 人工腱索

【背景】乳幼児に重症僧帽弁閉鎖不全症を来す乳児特発性僧帽弁腱索断裂例の報告が少なく、病因論、術式も確立していない。本研究の目的は,乳児期発症例の臨床像と中・遠隔期予後を明らかにすることである。 【方法】1998年から2011年までに経験した乳児特発性僧帽弁腱索断裂7例を発症時期および重症度、中・遠隔期予後の観点から後方視的に検討した。【結果】男児5例、女児2例で、全例生後4ないし5ヶ月であった。入院1週間以内に有熱症状を認めたのは5例/7例(71%)、そのうち術中所見で何らかの感染所見を疑わせる所見を認めたのは4例。入院時の各種培養は陰性。全例プレショックもしくはショック状態を呈した。24時間以内の緊急手術を4例に実施し、残りの3例は5日以内に外科手術を行った(平均2.1±1.5日)。3例は前尖、後尖ともに、3例前尖のみ、1例後尖のみの断裂を認めた。4例に後尖の延長を認めた。3例は16mmないし17mm人工弁置換術を行い、残りの4例はKay法による弁輪縫縮に加え人工腱索を用いた弁形成術を実施した。人工弁置換術を行った2例は、術後10年で再人工弁置換術を要した。現在、7例とも術後9年以上経過したが、僧帽弁閉鎖不全の程度はtrace-mildで、心拡大を認める症例なし。いずれもNYHA分類I度で、運動制限を必要としていない。【結論】乳児特発性僧帽弁腱索断裂による心不全の進行が速く、致死的な状態となりうるため、早期診断、迅速な外科的介入が不可欠となる。適切な介入が行われれば、良好な中・遠隔期予後が期待できる。一方で乳児期の何らかの先行感染によって惹起されている可能性があり、希少疾患ではあるが引き続き症例の集積、早期発見や抗炎症を目的とした治療介入の模索が求められる。