第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム07(II-SY07)
両側肺動脈絞扼(bPAB)からの二心室修復

2021年7月10日(土) 14:50 〜 16:50 Track2 (Web開催会場)

座長:大嶋 義博(兵庫県立こども病院 心臓血管外科)
座長:櫻井 一(JCHO中京病院 心臓血管外科)

[II-SY07-7] 大動脈弓閉塞性病変を伴った完全大血管転位またはTaussig-Bing奇形に対する両側肺動脈絞扼を用いた二期的修復

松島 峻介, 松久 弘典, 日隈 智憲, 長谷川 翔大, 和田 侑星, 大嶋 義博 (兵庫県立こども病院 心臓血管外科)

キーワード:両側肺動脈絞扼術, 動脈スイッチ術, 大動脈弓再建術

【背景】大動脈弓閉塞性病変を伴った完全大血管転位 (TGA) やTaussig-Bing奇形 (TB) に対し, 動脈スイッチによる心内修復と大動脈弓再建の一期的修復を推奨する報告が近年主流となっているが, その死亡率や再介入率は満足できるものではない. 我々は両側肺動脈絞扼 (bPAB) にて新生児期の一期的修復を回避し, 体重増加を図った上で根治術を行う二期的修復が基本方針であり. その経験を報告する.【方法】2010-2020年の連続症例を対象とした. PGE1製剤投与にて動脈管開存を維持し, bPABはFiO2 60%下で右上肢SpO2 80%台前半に術中調整した (2mm幅ePTFEにて外周10-11mm). 体重増加に伴う酸素化低下を右上肢SpO2 70%まで許容し, 月齢1-2及び体重4kgでの根治術を目処とした. 根治術は大動脈弓再建を選択的脳潅流と下行大動脈送血下に行い, 心内修復は動脈スイッチと主に経三尖弁での心室中隔欠損閉鎖または心室内血流転換を行った. 連続変数は中央値 [範囲] で表記した.【結果】対象は9例 (TGA 3例, TB 6例), 弓部病変は縮窄8例 (内, 弓部低形成6例) とB型離断1例, 出生体重は3.1 [2.6-3.5] kg, bPAB時日齢は3 [2-6] であった. 根治術待機中, 7例で経皮的心房中隔裂開を, 2例でbPABの外科的再調整を行った. 根治術は月齢1.6 [1.0-3.0], 体重3.9 [3.2-4.3] kgで施行, 末梢肺動脈形成を5例, 経肺動脈弁および経右室切開での心室内血流転換を各々1例で要した. 4例で術後開胸管理, 内1例で肺動脈狭窄残存にてECMO管理 (経皮的肺動脈形成 (BAP) 後に離脱) を要した. 抜管は術後4 [3-13] 日目に行った. 観察期間は4.3 [0.1-7.9] 年で死亡なし. 左室流出路, 大動脈, 冠動脈に狭窄例なく, BAPを3例に行い, 内1例で再手術 (左肺動脈形成及び大動脈弁形成) を要した.【考察】末梢肺動脈狭窄が問題として残るが, 煩雑な手技に加えて時に心室内血流転換が複雑となる当疾患に, bPABは安全で合併症を低減した術式が実施できる環境を提供する.