第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム08(II-SY08)
シミュレーション医学による先天性心疾患の診断と治療

2021年7月10日(土) 10:40 〜 12:10 Track3 (Web開催会場)

座長:瀧聞 浄宏(長野県立こども病院 循環器小児科)
座長:板谷 慶一(大阪市立大学 心臓血管外科)

[II-SY08-6] 4D-flow MRIを用いた、ファロー四徴症術後患者における主肺動脈の血流動態解析

稲毛 章郎1,2, 吉敷 香菜子2, 水野 直和3, 中井 亮佑2, 齋藤 美香2, 前田 佳真2, 小林 匠2, 浜道 裕ニ2, 上田 知実2, 矢崎 諭2, 嘉川 忠博2 (1.日本赤十字社医療センター 小児科, 2.榊原記念病院 小児循環器科, 3.榊原記念病院 放射線科)

キーワード:術後ファロー四徴症, energy loss, helicity

【目的】4D-flow MRIを用いて、ファロー四徴症 (TOF) 術後の主肺動脈 (MPA) における血流動態を評価した。
【方法】榊原記念病院にて心臓MRIを施行した15例を対象とし、MPAのenergy loss (EL) と血流内粒子のスピン回転方向を表す値であるhelicityを測定した。ELは一心拍中の最大値 (peak EL) と合算値を求め、合算値は体表面積 (EL/BSA) およびcardiac index (EL/BSA/CI) で除し標準化した。Helicityは時計回転を正、反時計回転を負とベクトル量で定義し合算値を算出した。4D-flow解析は、Cardio Flow Design社製iTFlow1.9にて行った。
【結果】平均年齢は26.1±16.2歳、右室流出路再建術式は肺動脈弁温存 (n-TAP) 10例 、transannular patch (TAP) 5例で、術後期間は20.9±10.0年であった。ELの合算値は収縮期で有意に高値であったが、6例 (40%) で拡張期にpeak ELを認めた。Helicityの合算平均値は正になり、9例 (60%) で時計回転優位であった。術式間の比較では、n-TAP群に比しTAP群のELが高値となったが有意差はなかった。N-TAP群の6例、TAP群の3例 (いずれも60%) で時計回転優位のhelicityを認めたが、両群間のhelicityに有意差はなかった。全心周期および収縮期EL/BSAとMPAのaverage through-plane velocity (r=0.48, 0.52) とarea (r=-0.49, -0.63) との間に相関を認めた。Peak ELと時計回転helicity (r=0.76) および反時計回転helicity (r=-0.79) との間に強い相関を認めた。また、拡張期EL/BSAと拡張期時計回転helicity (r=0.52) および拡張期反時計回転helicity (r=-0.56) との間に相関を認め、拡張期EL/BSA/CIとMPAのregurgitant fraction (r=0.45) との間に相関を認めた。
【結論】今回の検討では、術式間でELとhelicity に有意な差異は認めなかったが、TOF術後ではMPA内のhelicityは時計回転優位であった。全心周期にわたりELがhelicityに関わっており、特にpeak ELが大きく影響していることが示唆された。