第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

多領域パネルディスカッション

多領域パネルディスカッション(III-TRP)
移植へ繋げる重症心不全の機械的循環補助(mechanical circulatory support: MCS)のリレー -初動施設から移植実施施設への連携-

2021年7月11日(日) 13:40 〜 15:10 Track3 (Web開催会場)

座長:上野 高義(大阪大学 心臓血管外科)
座長:加藤 篤志(東京女子医科大学病院 臨床工学部)

[III-TRP-2] 臨床工学技士の視点からみた機械的循環補助の小児施設間搬送における現状と課題

渋谷 将大1, 正谷 憲宏2,3,4, 梅津 昭宏1, 居石 崇志2, 吉田 拓司1, 齊藤 修2 (1.東京都立小児総合医療センター 臨床工学技士, 2.東京都立小児総合医療センター 集中治療科, 3. 日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 小児心臓血管外科 小児循環器集中治療部門, 4. 日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 集中治療部)

キーワード:ECMO, interhospital transport, clinical engineer

【背景】膜型人工肺(ECMO)は長期の心臓移植待機には不向きであり、ECMOから離脱できない患者は移植適応があれば早期に補助人工心臓(VAD)を装着する必要がある。しかし、本邦では小児のVAD実施施設が限られており、時に長距離に及ぶ施設間ECMO搬送が必要となる。VAD装着目的に補助循環装着下で転院搬送を行った2症例を紹介し、過去全11例のECMO施設間搬送の経験も踏まえて、安全な搬送と臨床工学技士の役割を考察する。
【症例1】拡張型心筋症の診断でSTCF(short-term continuous-flow)-VADで管理した1歳男児。VA-ECMO管理の長期化に伴いSTCF-VADに変更した。東京都内のVAD実施可能施設に陸路搬送を行った。人工肺のないSTCF-VADでは回路内血栓による問題がECMO以上に危惧されたが、有害事象なく搬送を完了した。
【症例2】虚血性心筋症の診断でcentral VA-ECMOで管理した3歳女児。大阪府内のVAD実施可能施設へ長距離陸路搬送を行った。事前のシミュレーションを行い重大な有害事象なく搬送を完了した。
【考察】搬送手段や距離・時間に応じた準備と人員の確保が重要である。医療機器の対応、電力や医療ガスについても考慮すべきである。また、搬送時における有害事象の報告もあり、特に小児の場合には短いカニューレ挿入長と移動の際の問題から事故抜去の危険性が高まるとされる。それに加え、搬送中の体温低下にも注意が必要である。搬送中の有害事象が生じた際に、限られた機材・人員・環境の中での対応策及びその選択肢を増やすための準備が搬送における肝であり、搬送システムの定型化が望まれる。多種多様な医療機器を伴う施設間搬送において、臨床工学技士は大きな役割を担っていると考える。
【結論】安全な搬送のために準備を含めたシステムの定型化は重要項目の1つである。本発表では、移植・VAD実施施設へのECMO搬送について、臨床工学技士の立場から当院の取り組みやシステムの工夫について概説する。