第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望セッション

会長要望セッション07 シンポジウム(III-YB07)
小児循環器領域におけるECMO治療

2021年7月11日(日) 09:00 〜 10:30 Track2 (Web開催会場)

座長:新川 武史(東京女子医科大学 心臓血管外科学)
座長:帆足 孝也(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)

[III-YB07-7] 補助循環サポートを要した小児劇症型心筋炎の治療成績

渡邊 卓次1, 平 将生1, 富永 佑児1, 長谷川 然1, 石井 良2, 石田 秀和2, 成田 淳2, 上野 高義1, 澤 芳樹1 (1.大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学, 2.大阪大学大学院医学系研究科 小児科学)

キーワード:劇症型心筋炎, VAD, Impella

【背景】劇症型心筋炎は急速に心原性ショックへと進展した場合ECMOやVADといった補助循環治療が必要となる。小児VAD認定施設ならびに小児心移植施設である当院には、peripheral ECMOでは循環補助が不十分である劇症型心筋炎が搬送されることが多い。そこで今回、当院におけるVAD治療を要した急性期劇症型心筋炎の成績を報告する。【患者】対象は2011年から2021年までに当院でVAD治療を要した劇症型心筋炎11例。年齢 2-16 (中央値9)歳、BSA0.59-1.59 (中央値1.30)m2であった。【結果】初期治療として内科的治療を先行した症例は1例、peripheral ECMOを導入した症例は8例、central ECMOを導入した症例は2例であったが、当院搬送後10例でtemporally VAD (LVAD 2例, BiVAD 8例)へconversionした。1例はImpella CPが右鎖骨下動脈より挿入可能であった。そのうち補助循環装置の離脱が可能であったのは4 例であった。植込み型VADへ移行した症例は2例で、そのうち1例は心移植に到達した。治療中に死亡した症例は6例であり、全例最終的に低酸素脳症や広範囲脳梗塞あるいは脳出血を来した。また、peripheral ECMOにより下肢虚血を来した症例が2例あり、いずれも一時的透析治療を要する急性腎不全を合併した。離脱症例における装着期間は6, 7, 10, 22日であり、1例は低酸素脳症のためにVAD装着下での移植待機は困難であったため、VAD off testを行い辛うじて離脱できた。【まとめ】補助循環サポートを要した小児劇症型心筋炎症例は、特に頭蓋内合併症が多く良好な成績が得られなかったが、補助循環サポート離脱が可能な症例も認めた。小児劇症型心筋炎においては、救命だけでなく、脳障害をはじめとする後遺症を残さない治療を目指して、VAD治療が可能な専門施設への可及的早期の搬送が重要であると考えられた。