第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

一般心臓病学

デジタルオーラルI(OR1)
一般心臓病学1

指定討論者:麻生 健太郎(聖マリアンナ医科大学 小児科)
指定討論者:小野 博(国立成育医療研究センター)

[OR1-5] ファロー四徴症の冠動脈左右優位性と特徴

小林 優, 宗内 淳, 渡辺 まみ江, 杉谷 雄一郎, 古田 貴士, 土井 大人, 江崎 大起 (JCHO九州病院 小児科)

キーワード:ファロー四徴症, 冠動脈, 虚血性心疾患

【背景】冠動脈の左右差優位性は成人期の虚血性心疾患に際して問題となり、右冠動脈優位は冠動脈3枝病変のリスクとの報告もある。成人先天性心疾患患者において虚血性心疾患の合併・治療は大きな問題となり詳細な冠動脈の解剖を知ることが重要である。
【方法】TOF100例とVSD100例における上行大動脈造影所見から、冠動脈優位性(後下行枝支配を有意とした)、左冠動脈主幹部、前下行枝、回旋枝、対角枝、右冠動脈主幹部径のZ値、上行大動脈曲率(大動脈弁輪と上行大動脈断面の角度)を計測し2群間で比較した。
【結果】TOF群の方が年齢[TOF:9.7(6.3―15.6)vs VSD:3.0(2.0―5.9)か月、(P<0.0001)]が高く、体重[TOF:8.1(7.1―9.1)vs VSD: 4.8(4.0―6.1)kg、(P<0.0001)]が大きかった。冠動脈左右優位性はTOF群:右優位90例、VSD群:右優位49例とTOF群が有意に右冠動脈優位であった(P<0.0001)。冠動脈径Z値は右冠動脈主幹部[TOF群:1.57(0.72―2.53)vs VSD群:0.84(0.07―2.07)、P=0.021]と左冠動脈主幹部[TOF群:0.53(-0.67―1.63) vs VSD群:1.24(0.32-2.13)、P=0.006]において2群間に有意差を認めた。上行大動脈曲率はTOF群:108(94―144)度に対してVSD群:97(91―104)度とTOF群で上行大動脈曲率が大きかった(P<0.0001) 。
【考察】TOF群のほとんどが右冠動脈優位で右冠動脈径が大きかった。冠動脈発生は大動脈周囲に形成された毛細血管叢が集合して大動脈へ開口するとされるが血管内皮増殖因子(VEGF)がその過程に寄与する。上行大動脈曲率が大きいTOFでは右冠尖優位にshear stressがかかることでVEGF産生が亢進し、より右冠尖優位の冠動脈システムが構築されるのではないかと推測した。