第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心臓血管機能

デジタルオーラルI(OR10)
心臓血管機能

指定討論者:宗内 淳(JCHO九州病院)
指定討論者:増谷 聡(埼玉医科大学総合医療センター)

[OR10-3] TCPC前後における肺血管拡張治療の影響

原 卓也, 石川 友一, 倉岡 彩子, 兒玉 祥彦, 中村 真, 佐川 浩一 (福岡市立こども病院)

キーワード:フォンタン, 肺血管拡張薬, SPCF

【背景】Fontan (F)循環において肺血管拡張薬(PVD)は肺動脈圧(Pap)低下等臨床的改善が期待されるが、最近の2つのmeta-analysisでは結果は相反した。PVDの血行動態的影響は必ずしも明確ではなく、特に体肺側副動脈血流(SPCF)への影響についてまとまった報告はない。【目的】PVDがF循環、特にSPCFに与える影響を検討する。【方法】2011-2021年に当院でTCPC前と後双方で心カテ、MRI両者を行った69例をBDG術後~TCPC周術期にPVDを開始した群(P群)とコントロール群(C群)に分け血行動態指標を比較した。【結果】P群:C群=8:61例。TCPC前では肺血管抵抗 (RpI)やPA indexに差はなくPApのみP群で高い傾向にあった (9.0±1.9 vs. 7.5±2.3mmHg; p=0.08)。血流量 (Q: ml/min/m2)についてはP群でQsvcのみ低値を示した。TCPC後ではP群においてPApやRpI、transpulmonary gradient (TPG)は低値の傾向を示し (PAp: 9.7±2.6 vs. 8.3±1.9; p=0.08, RpI: 1.20±0.50 vs. 1.70±0.67; p=0.08, TPG: 4.1±1.4 vs. 4.8±1.2; p=0.16)、PAWpやCVPは高値の傾向を示した (PAWp: 5.6±1.9 vs. 3.6±1.6; p<0.05, CVP: 10.9±2.4 vs. 9.7±2.0; p=0.135)。血流量についてはP群でQp/QsとQpvの増多傾向(Qp/Qs:1.50±0.43 vs. 1.26±0.22; p<0.05, Qpv: 3.65±0.53 vs. 3.30±0.63; p=0.10)を示したが、Qsvc+ivcは差を認めなかった。一方SPCFは両群ともTCPC後に減少したが、減少率はP群で低い傾向にあり(79±52 vs. 58±42%; p=0.10)、流量はP群で有意に高値であった (1.30±0.86 vs. 0.73±0.55; p<0.05)。【考察】PVDはRpIやPApを低下させる可能性はあるが、一方でSPCFおよびLApを増大させうる。すなわちSPCF増大からLApが上昇することでTPGの減少は相殺され、長期使用でSPCFがより増大すればむしろPApは増大しうる。【結語】F循環へのPVD使用にあたっては少なくとも経時的かつ詳細な血行動態評価が望ましく、その功罪を熟考する必要がある。