第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心臓血管機能

デジタルオーラルI(OR10)
心臓血管機能

指定討論者:宗内 淳(JCHO九州病院)
指定討論者:増谷 聡(埼玉医科大学総合医療センター)

[OR10-5] 包括的Coupling Framework Theoryによる斬新な小児心不全病態の評価法

中川 良1,2, 先崎 秀明1, 犬塚 亮3, 竹蓋 清高1, 佐藤 有美1, 籏 義仁1, 中西 敏雄1, 植田 由衣1 (1.国際医療福祉大学 成田病院 小児科, 2.成田富里徳洲会病院 小児科, 3.東京大学医学部 小児科)

キーワード:after load mismatch, V-A coupling, Heart failure

背景】収縮不全による心不全は、心収縮性の低下に伴い後負荷との不適合が生じ、心室Remodelingによる代償反応の過程で一回拍出量(SV)の低下が進行していく。この病態を適切に評価するには負荷非依存の収縮性の指標と心室後負荷連関の包括的な解析が必要である。従来、時変Elastanceモデルと収縮末期圧容積関係(ESPVR)に基づく、収縮性Eesと後負荷EaとのCoupling Frameworkは心室後負荷連関のGold Standardとして提唱されてきた。我々は、新たに平均駆出圧容積関係(EMPVR)の概念と等容収縮期Elastanceモデルの後負荷連関の概念を導入し、さらに包括的な心不全病態把握の方法論を提唱する。方法と結果】EMPVRはPreload recruitable stroke workの傾きMswと容積切片Vwの座標を通過する生理を内包しており、EMPVRの傾きEes’はMsw/SVで求めることができる。Ees’はEesに比して犬、人双方においてDobutamine、心不全進展、さらに心室Remodelingに伴う収縮性変化をより鋭敏に捉えた。一方、平均駆出圧(Pm)をSW/SVで定義するとPm/SVで定義できる新しい後負荷指標Ea‘は拍動抵抗を包括し、Eaが捉えられないFallot術後の肺血管床変化や川崎病の体血管床変化を的確に捉えることができた。さらにEes’/Ea’はMsw/Pmで求めることが可能で、Mswの後負荷とのCouplingを可能にした。Ees’/Ea’の正常値は概ね0.65±0.04の狭い範囲にあり、1を最大値としてWorking Preloadにおける収縮予備能を表し、心不全進展とともに低下した。心室圧最大変化率(dp/dtmax)- EDV関係の傾きMは、収縮末期までの時間tmaxを用いてM・tmax/Eaとして後負荷とのCouplingを表すことが可能で、Ees/Eaの変化に加え心拍数の変化も反映して心不全に伴うAfterload MismatchをEes/Eaより鋭敏に捉えた。考察】時変Elastance, ESPVR, EMPVRを用いて心室後負荷連関を多角的包括的に評価でき今後臨床における心不全病態評価と予後予測に重要な役割を演じると思われた。