第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

一般心臓病学

デジタルオーラルI(OR2)
一般心臓病学2

指定討論者:手島 秀剛(市立大村市民病院)
指定討論者:市橋 光(自治医科大学附属さいたま医療センター 小児科))

[OR2-1] 先天性心疾患患者におけるPIIIPの有用性

岡 秀治, 今西 梨菜, 中右 弘一, 東 寛 (旭川医科大学 小児科)

キーワード:先天性心疾患, バイオマーカー, 線維化

【背景】先天性心疾患は、圧・容量負荷の影響で心筋障害による心筋線維化や、術後に肝うっ血が進行して肝線維化を起こすことがある。Procollagen III peptide (以下、PIIIP)は、線維化マーカーとして知られており、心筋や肝線維化の診断に有用とされているが、先天性心疾患での報告は少ない。【目的】先天性心疾患患者におけるPIIIPの有用性を検討すること。【方法】2017年1月から2020年12月に入院した患者257名のうち、二心室の先天性心疾患ではない42例、肝障害のある2例、データ不足の52例を除外し、残りの161名を対象にした。年齢の中央値は6.4歳(0.3-33歳)。心臓カテーテル検査で得られた検査値とPIIIPについて検討した。【結果・考察】PIIIPは1歳未満で112.0 ± 57.1、1-9歳で32.8 ± 16.0、10-15歳で36.5 ± 13.9、16歳以上で12.4 ± 4.8ng/mLであった。ACEi/ARBの内服は、各年齢で2、2、4、4名であった。成人のみPIIIPの正常上限値が9.5mg/mLと報告されており、16歳以上の28症例を2群に分けて検討した。PIIIP高値群(n = 20)では低値群(n = 8)と比較して、右房圧が有意に高値であった(9.1mmHg vs. 5.4mmHg, p=0.019)。圧負荷の指標として右室圧/左室圧比と左室流出路圧較差、容量負荷の指標として%RVEDV、%LVEDVを用いて比較したが、有意差は認めなかった。PIIIPは成長に伴うコラーゲン代謝で上昇するが、成人先天性心疾患患者では高値を示すことが多かった。これは心負荷や手術侵襲だけではなく、肝うっ血や肝硬度上昇の影響もあると考える。【結論】成人先天性心疾患者においてPIIIPは有意に高値を示す傾向がある。心負荷や肝うっ血などの影響が原因と考えられ、その解釈には注意が必要である。