第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

一般心臓病学

デジタルオーラルI(OR2)
一般心臓病学2

指定討論者:手島 秀剛(市立大村市民病院)
指定討論者:市橋 光(自治医科大学附属さいたま医療センター 小児科))

[OR2-5] 肺血流増加型先天性心疾患の心不全管理における胸郭内体液量(Thoracic Fluid Content : TFC)の有用性

湯浅 絵理佳, 高橋 努 (済生会宇都宮病院 小児科)

キーワード:胸郭内体液量, 電気心臓測定法, 肺血流増加型先天性心疾患

【背景】電気心臓測定法を利用した非観血的心機能測定は循環管理に有用である。パラメータのひとつであるTFCは胸郭内の全液体成分を反映する値で、心不全管理において肺うっ血の指標として使用できる可能性がある。【目的】肺血流増加型先天性心疾患に対して治療(利尿剤・インドメタシン)を導入した症例で、TFCの有用性を検証する。【方法】肺血流増加型先天性心疾患の14例(日齢3~月齢1)に対して電気的心臓計測モニター(AESCULON mini)を装着し、治療前後でTFCを測定した。測定結果は、治療後の初回評価時に治療強化の必要性があった群(=治療強化群)8例と、その必要性がなかった群(=治療非強化群)6例の2群間で比較した。またROC解析を行いカットオフ値を求めた。【結果】治療導入前後のTFC変化量の平均は治療強化群で0、非強化群で-1.17(p値=0.85)、変化率の平均は治療強化群で0.05、非強化群で-0.02であり(p値=0.72)、どちらも2群間で有意差がなかった。またROC解析からカットオフ値22とすると感度0.875、特異度0.667、曲線下面積 0.75となった(95%信頼区間0.438-1.0)。陽性的中率は0.777、陰性的中率は0.801だった。【考察】ROC解析結果は、治療後後のTFCが22以下であれば80%の確率でさらなる治療強化の必要がないことを意味する。ただしTFCの基準値はなく日齢や月齢によっても生理的に変動することから、カットオフ値のみではなく、各々の症例で初期値からの変化をとらえ、症状や胸部X線所見と併せて考えることが肝要である。特に新生児・乳児では胸部X線の撮影条件の統一が困難で、心胸郭比や肺うっ血を正しく評価できないことも多い。その点、定量可能なパラメータであるTFCは小児の心不全評価に有用と考える。【結論】肺血流増加型先天性心疾患の心不全管理の指標にTFCは有用である。