The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

複雑心奇形

デジタルオーラルI(OR7)
複雑心奇形 2

指定討論者:大月 審一(岡山大学病院 小児循環器科)
指定討論者:富田 英(昭和大学病院)

[OR7-4] Fontan循環成立へ向けた早期肺血管拡張薬投与症例の検討

加護 祐久1, 田中 登1, 磯 武史1, 松井 こと子1, 古川 岳史1, 福永 英生1, 高橋 健1, 稀代 雅彦1, 中西 啓介2, 川崎 志保理2, 清水 俊明1 (1.順天堂大学医学部 小児科, 2.順天堂大学医学部 心臓血管外科)

Keywords:肺血管拡張薬, Fontan循環, 肺血管抵抗

【背景】我々は2015年に、「Fontan循環成立に向けた経口肺血管拡張薬(PVD)の積極的投与による予後改善の可能性」について報告しているが、早期PVD導入後にFontan手術(F術)に到達した症例の中には、術前の低い肺血管抵抗(Rp)にもかかわらず術後合併症に難渋する症例が存在し検討の余地がある。【目的】早期PVD導入症例のうち、F術後の周術期管理に難渋した症例の特徴を明らかにし、Fontan循環成立へのリスク因子を検討すること。【対象と方法】対象は2008年4月から2020年9月にF術を行なった41症例のうち、初回姑息術後にPVDを導入された18例(43%)を対象とした。ICU滞在期間、胸腔ドレーンの留置期間が共に10日以上を難渋例(A群:6例, うちtake down 1例、21 trisomy 2例)とし、その他を非難渋例(B群:12例)とした。bidirectional Glenn手術(G術)前、F術前、F術後1年時点での心カテ指標を中心に後方視的検討を行なった。【結果】F術時の年齢、体重、性別、APCA scoreに有意差は認めなかった。有意差を認めたのは、F術前のSpO2(A群: 80±0.6mmHg, B群: 84±3.5mmHg, p<0.05)、G術後のPA index(PAI)の低下(A群: 231±79→129±10, B群: 184±74→177±88, p<0.05)、F術後1年時のEDP(A群: 11.2±2.1mmHg, B群: 7.9±1.6mmHg, p<0.05)であった。F術前のRpに有意差は認めなかった。(A群: 1.1±0.43, B群: 1.0±0.50)【考察】早期PVD導入症例はtake down 1例を除き、Rpが低値であり、Fontan循環が成立していた。しかし、Rpが低値であってもPAIやSpO2、さらには肺血管capacitanceの評価が必要である。【結語】Fontan循環成立に向けた早期PVD導入はRpを十分低下させるが、(1)G術後からのPAI低下、(2)SpO2低値、(3)21 trisomyはhigh risk因子である。一方で、平均肺動脈圧が高値あっても上記因子がなければFontan循環は合理的なレベルで成立可能である。