第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心血管発生・基礎研究

デジタルオーラルII(P42)
心血管発生・基礎研究

指定討論者:柴田 映道(慶應義塾大学医学部小児科)
指定討論者:土橋 隆俊(川崎市立川崎病院)

[P42-1] 若年性に着眼した循環器難病の新たな治療開発への取り組み

森 雅樹 (国立循環器病研究センター研究所)

キーワード:若年性, 若年性遺伝子, 年齢依存的オルタナティブスプライシング

小児循環器難病の新たな治療戦略の確立を見据え、小児が生まれながらにもつ大人にはない生理特性に着眼して研究を行っている。そのような生理的性質には、「成長」や「成熟」、「適応」、「回復性」、「可塑性」など多くのものが含まれ、「若年性 (juvenility)」と位置付けている。若年性の分子基盤を明らかにすることで、小児が本来もっているアドバンテージを引き出し、難病の治療に役立てられる可能性がある。成長期のマウスをモデル生物として活用し、心筋細胞で成長・発達段階に特異的に高発現する遺伝子群を「若年性遺伝子 (JAG)」として同定した。さらに若年期の遺伝子発現プロファイルを詳細に調べた結果、成長期には大人とは異なったオルタナティブ・スプライシングがゲノムワイドに生じていることを明らかにした。このような若年期特異的なスプライシング変化をバイオインフォマティクス解析により網羅同定し、年齢依存的オルタナティブ・スプライシング (age-dependent alternative splicing, ADAS) として同定した。ADASの責任分子の1つはJAGであるSrsf7であり、Srsf7のノックアウトマウスでは若年期であるにもかかわらず、加齢期型のスプライシングパターンが進行する。Srsf7の機能修飾により、スプライシングパターンの加齢性変化を抑止することによって成長を促進する新たな再生医療アプローチの技術基盤となる可能性がある。