第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラルII(P48)
外科治療 1

指定討論者:中野 俊秀(福岡市立こども病院)
指定討論者:益田 宗孝(福岡和白病院)

[P48-2] 極低出生体重児のPDAに対する動脈管結紮術術後に発症した合併症およびその対策について

田中 明彦1, 櫻庭 幹1, 三品 泰二郎1, 水島 正人2, 塩野 展子2 (1.市立札幌病院 呼吸器外科, 2.市立札幌病院 新生児内科)

キーワード:PDA, 極低出生体重児, 肺ヘルニア

【はじめに】当科は,2006年から2020年までに30例の極低出生体重児(1500g以下)と1例の低出生体重児(1760g)に対する小開胸動脈管結紮術を施行してきた.平均体重882±261g(最低425g).手術は,日齢平均19.3±13.8日目に施行され,右側臥位で内径2.0~2.5mmのsingle挿管チューブによる両肺換気下に施行.第3または第4肋間で側方小開胸し,肺を圧排しながら左反回神経より大動脈側で動脈管に鉗子を回し1-0絹糸にて二重結紮した.手術死亡はなく,術後に嗄声や気胸,乳び胸も認めなかった.稀有な合併症として左横隔神経麻痺と開胸創の肺ヘルニアを経験した.【症例】症例1.男児で在胎26週と3日で出生.日齢13に体重885gで手術を施行した,左迷走神経が動脈管に隣接しており剥離時の損傷を避けるために同神経にゴムテープをかけて前方によけた.術後,テーピングしていない左横隔神経の麻痺を認めたが,5カ月後に回復した.症例2.女児で在胎24週と3日で出生.日齢13に体重724gで手術を施行した,開胸肋間の閉胸時に肋間癒着や起因する脊柱側弯を避けるために開胸肋間にかけた糸は一旦かけて最後にはずすこととした.同症例は,慢性肺疾患のため陽圧人工呼吸をさらに27日間施行された.開胸肋間は術後10日目から徐々に開大.軽い奇異呼吸となるため生後11カ月に人工膜で開大した肋間(胸壁)を補填した.【対策】症例1.以降では,神経のテーピングは行っていない.症例2.以降では,閉胸時に4-0吸収糸1本にて肋間を閉鎖することとしたが,開胸肋間にコメガーゼを置き肋間の間隔を1mm以上開けて結紮閉胸し,肋間の癒着も予防した.【結語】極低出生体重児のPDA手術に際しては,繊細な注意が必要となる.