日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育方法 ポスター発表

[09 方ーポー08] 発生運動学的立場から見たスキーにおける初心者指導

優勢化の身体発生に注目して

〇吉本 忠弘1 (1.甲南大学)

 右方向へのターンでは上手く雪面を捉えられるが、左方向のターンでは上手くいかない。アルペンスキーの経験者であれば、誰もが一度はこのような経験したことがあるだろう。アルペンスキーにおいて習得目標とされる「わざ」は、左右方向へのターンを連続的に行うという基本構造を有している。それゆえ、技能向上を目指した場合には、必然的に左右両ターンの動感発生と向き合うことになる。
 「人間の本源的な身体運動は動感非対称性の本質法則を持つ」(金子、2009)といわれるように、われわれが何か運動を行う際には、そこに優勢化法則が働いている。金子は「体操競技やフィギュアスケートに見られる膨大な『回転技』や『ひねり技』さらにスキーなどのターン形式を含めて、それらの片側の優勢化能力は複雑な様相を呈す」(金子、2002)と述べ、この能力が「運動の形成位相」において二つの極を持つと指摘している(金子、2002)。一つ目は、運動の優勢化現象に初めて気づく位相であり、「自らの運動感覚意識の存在に目覚め、動きやすさを感じ取る大切な時期である」とし、これを顕在化し、自らの動き方の優勢化能力に向き合うことによって、運動修正の道を歩き始めることができるという(金子、2002)。もう一つは、運動形成の究極位相としての自在位相にあるとし、そこでは、優勢化能力は消化してしまい、その側性は差異化現象のなかに姿を没してしまうという(金子、2002)。
 本研究では、前者の極に注目し、スキー初心者への「プルークボーゲン」の指導を例証として、学習者における優勢化の発生様相を分析する。これにより、スキー初心者への指導において、学習者の優勢化能力の発生に注目すべき根拠を発生運動学的立場から示すことを目的とする。