日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育方法 ポスター発表

[09 方ーポー10] 指導者による動感目標像構成化の視点と技術の類型化に関する発生運動学的研究

段違い平行棒における「後方浮支持回転倒立」の場合

〇佐藤 晋也1 (1.東京女子体育大学)

指導者が学習者に運動を教える際には、その将来的な発展性を見据えた技術的な目標像を明確に持っていることが重要である。特に専門性の高い競技レベルを目指している場合、その指導者による目標像の設定の責任は極めて重大である。本研究で取り上げる、女子体操競技における段違い平行棒の「後方浮き支持回転倒立」は、その種目の基本技として多くの選手が身につけている技である。ただ、その技の課題を達成するための技術には複数のタイプが存在し、指導者はその中から技の発展を見据えた適切な技術の選択に迫られることになる。そこで本研究では、「後方浮支持回転倒立」を指導する際の目標像の設定に関する問題性について、発生論的運動学(金子、2002)の立場から検討し、指導方法論に寄与することを目的とする。
本研究では、大学生の体操競技選手によって習得されている「後方浮支持回転倒立」の映像と、選手たちの動感意識に関する交信分析の結果を基礎資料として、特にこの技の要となる“逆懸垂からの上昇局面”にかけての動感意識に着目した検討が行われた。そして、その局面における2種類の技術類型を確認するとともに、その2種類の技術が発展技の習得にどのように影響を及ぼしていくかについて考察が行われた。そのような一連の考察を通して、本研究では以下の点に関する示唆が得られた。

1)「後方浮支持回転倒立」の発展技を習得していない選手と、発展技を習得している選手では、回転上昇の身体操作において明らかに異なる技術が用いられていること。
2)確認された2つの技術では、その内的な動感意識としても全く異なるものであること。
3)発展技の習得を見据えた場合、早い段階で技術的目標像を設定し直す必要があること。