日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育方法 ポスター発表

[09 方ーポー31] 部員の主体性を保障する指導の在り方

高校野球における選手選考を事例にして

〇深見 英一郎1、井上 一彦2、岡田 悠佑3 (1.早稲田大学スポーツ科学学術院、2.岩手県立大学 高等教育推進センター、3.明治学院大学心理学部)

運動部活動は、部員の自主的、自発的な参加により行われるスポーツ活動であり、学校教育の一端を担う教育活動として位置づけられている。他方、その取組に関しては勝利を目指したり今以上の技能水準や記録に挑戦したりするといった競技スポーツとしての側面も有している。このような運動部活動の教育と競技という2つの側面は、実際の指導場面においてしばしば両立が困難な状況に陥る。その事例の一つが試合に出場するメンバーを選ぶ選手選考であろう。選手選考では、「チームとして何をめざすのか」、「自分(指導者/個々の部員)はどうしたいか」等の立場やチームがおかれた状況等によって様々に意見が異なるため容易ではない。少なくとも当事者である指導者と部員双方が納得のいく選手選考の在り方を検討する必要がある。
本研究では、現役の高校野球の指導者に対して選手選考方法に関する実態調査を行った。その結果、指導者が主導して部員の考えや意見を聴き取り、それらを踏まえて指導者が選手選考を行うタイプの選手選考が最も多かった。ここでは、事前に指導者がすべての部員に対して選考基準を提示し、すべての部員に対して選手に選ばれるチャンスを平等に保障していた。また、野球の技能・実績の高さだけで選手を選ぶのではなく、その選手の練習態度や学校での生活態度が良好であることを重要な条件としていた。これらの条件、手続きにより、すべての部員が主体的に努力する機会が保障されていたと考えられる。
対象としたチームの中に、部員だけで意見交換して民主的に選手選考するチームは確認されなかった。それは、多様かつ多数の部員からなるチームにおいて誰をどのように選び、誰が決定するのかを民主的な手続きにより、公平で透明性の高い方法で公正に実施することはとても煩雑な手続きだからであると考えられる。