日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育方法 ポスター発表

[09 方ーポー64] 高校時代の剣道部活動指導で指導者が何を育もうとし、アスリートが何を学んだか

〇玉田 理沙子1、伊藤 雅充2 (1.日本体育大学大学院、2.日本体育大学)

2020年、国際人権NGOであるヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本のスポーツにおいて子どもの虐待が行われているという報告書を発表した。近年ではこのような虐待に代表されるスポーツ指導の問題が多く表面化している。これらの問題が日本のスポーツ指導文化、特に勝利至上主義に起因するものであるという考えもあるが、日本のスポーツ指導が国際的なコーチングで目指されているものと異なるのかどうかは興味深いところである。そこで本研究は、日本固有の文化で発展してきた剣道に着目し、指導者がアスリートに何を育もうと指導しているのか、さらにアスリートはその指導によって何を獲得したと考えているのかを明らかにし、スポーツ指導の質向上のための方策を練る糸口を探すことを目的とした。高校剣道指導者10名と彼らの指導を受けた大学生アスリート24名を対象者とし、半構造化インタビュー及びフォーカスグループインタビューを実施した。

指導者のデータをSCATおよびKJ法を用い分析した結果、【人間性】と【競技力】の2つの大カテゴリーに分類できた。さらに、【人間性】には①生涯剣道、②剣道愛、③向上心、④Grit、⑤プロセス、⑥考える力、⑦自立、⑧規範意識、⑨社会性の9つの中カテゴリーに分けることができた。この内容はコーチングの目的として指標となっている4C’s(Côté and Gilbert , 2009)の内容と矛盾しないと考えられた。アスリートは、高校時代の経験を通して獲得したこととして、指導者が育もうとしていることと同様の内容を挙げており、両者の間に大きな矛盾はみられなかった。本研究では指導者とその指導を受けたアスリートの語りから分析を試みたが、ここからは問題解決に直結する情報を得ることができなかった。今後は実際の行動を観察するなど、エスノグラフィックな研究を行うことで、実際の指導を評価する必要があると考えられた。