The 71st Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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Oral (Theme)

スポーツ文化研究部会 » 【課題C】多様なスポーツ文化の保存・流通・促進をいかに刷新していくか

スポーツ文化研究部会【課題C】口頭発表②

Wed. Sep 8, 2021 1:45 PM - 3:15 PM Room 8 (Zoom)

Chair: Hiroshi Kubota (Tokyo Gakugei University)

1:45 PM - 2:00 PM

[スポーツ文化-C-07] マンガ「バトルスタディーズ」にみる部活動文化

「部則」に着目して

*Ishimura Hiroaki1 (1. St. Andrew's University)

日本の運動部活動はスポーツの普及・発展に大きく貢献してきた(中澤:2012)。運動部活動が抱える根深い問題の一つに体罰が挙げられる。体罰については、これまでも多く研究が行われており、教育的立場から論じたもの(大峰・友添:2014など)だけでなく、運動部活動の構造や文化性について論じられたもの(松田:2016、庄形:2017)など多岐にわたる。また、マンガは日本を代表する文化の一つであり(成:2017)、マンガに描かれたスポーツ世界のリアリティが生活世界の受け皿になっている(松田:2012)とマンガとスポーツが密接な関係にあることが指摘されている。
そこで本研究で実社会の運動部活動に内在する体罰問題と関連する文化的要素をマンガというポップカルチャーの解釈的内容分析から明らかにすることを目的とした。特に運動部活動において「部則」がどのような役割を果たしているかに着目する。対象とした作品は、青年漫画誌『モーニング』で連載されている『バトルスタディーズ』である。
作品では「1年生ノート」に記された部則が存在し、新入生は厳しい規則を課せられ、上級生が規則を破った下級生を指導するシーンが描かれる。試合中では上級生と下級生の実力の差が強調されており、それが「規律ある生活の経験の差」であると説明されている。下級生は上級生の実力を目の当たりにし、理不尽にも思える部則に「価値」を見出し、上級生は「部則」を経験してきたことが自分たちの「強さの源」であるとい認識してように描かれている。部則に価値・意味を見出した1年生は行動を変容させていく一方で、上級生は時代の流れから部則を変えなければならない思いと自分たちの伝統を変えてはいけない思いの狭間で葛藤する様子が描かれた。当該作品において「部則」は1年生に対する通過儀礼的役割とチームの伝統やアイデンティティを生成する役割を果たしているといえる。