Japanese society of radiological technology kinki branch

Presentation information

Basic Lecture

Basic Lecture

Sun. Jan 21, 2018 2:20 PM - 3:20 PM Room4 (2F)

2:20 PM - 3:20 PM

[BL-4] 単純X線撮影の物理特性を評価するFirst step !

*伊泉 哲太1 (1. 大阪国際がんセンター 放射線診断・IVR科)

 昨今,単純X線撮影は急速なディジタル化が進んでおり,CRシステムから据置型FPD,可搬型有線FPD,そして可搬型無線FPDと数年の間で様々な形を変え,我々の日常業務で使用されている.しかし,一言でFPDとまとめても,直接変換方式と間接変換方式が存在し,両者で画質が大きく異なる場合がある.また,間接変換方式の中でもシンチレーターにガドリニウムオキシ硫化物(GOS)とヨウ化セシウム(CsI)を使用しているタイプがあり,両者で量子検出効率(DQE)は大きく異なる.
 そこで今回は画質の違いを物理的に評価する方法を解説する.物理的評価として入出力特性,解像特性およびノイズ特性が挙げられる.これらの評価法は,臨床での撮影目的に応じて何を重視するかで評価における重要性が異なる.われわれが,撮影目的に応じた画像設計を行う場合には,その基本となる受光系の情報を得ることから始まる.受光系の特性を把握し,次に画像生成過程における画質に及ぼすさまざまな因子について検討する必要がある.しかし,個々の物理的評価は,受光系システムの一面だけの特性を見ているのであって,全てを統合した評価ではない.このため,各物理特性と臨床での視覚評価は必ずしも一致しない場合があることを留意しておかなければならない.

入出力特性
 ディジタルシステムでは,主に2つのタイプの入出力特性を持ったシステムがある.CRで用いられている「logシステム」と多くのFPDで採用されている「リニアシステム」がある.ただし,FPDで得られるリニアシステムの画像はあくまでRawデータの部分であり,ユーザーで出力可能なDICOM画像にはlog変換されている場合がある.このあたりの注意点も述べながら,タイムスケール法を用いた入出力特性について解説する.

解像特性
 ディジタルシステムでは,一般的にPresampled MTFを解像特性の指標とする.Presampled MTFの測定には矩形波チャート法,エッジ法,スリット法の3種類が存在する.IEC(International Electrotechnical Commission)規格において採用されているエッジ法について解説する.また,タングステンエッジデバイスが手元に無い施設でも測定できる方法についても述べる.

ノイズ特性
 ノイズ特性の評価方法として,RMS粒状度と空間周波数領域でノイズ解析を行うNNPS(Normalized NPS)がある.今回はFPDのノイズ特性を詳細に知ることが可能であるNNPSについてのみ解説する.ここでは2次元フーリエ変換法について述べる.
また,これらの物理特性の評価を行うことにより,当院で役立った事例を挙げる.

『医療の質が問われるなか,医療機器はその特性や能力の中にブラックボックスを抱えていてはいけない.我々は受光系機器の正確な能力を把握し,画像処理を有効かつ適切に使用する臨床力を持たねばならない』私が尊敬する大阪急性期・総合医療センターの船橋先生の言葉である.皆様方と共にブラックボックス化する機器への挑戦を行うことが私の願いである.国家資格を持つプロフェッショナルとして,また病で苦しむ方々に手を差し伸べる医療従事者として,臨床で活きる研究を始めるファーストステップとなれば幸いである.