Japanese society of radiological technology kinki branch

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MRI Seminar

MRI Seminar

Sat. Jan 20, 2018 3:20 PM - 4:20 PM Room4 (2F)

3:20 PM - 4:20 PM

[MS-1] 前立腺MRIにおける撮像技術 ~PI-RADS version2を参考に~

*上田 優1 (1. 株式会社フィリップス・ジャパン)

 前立腺MRIの標準的な撮像法について,T2強調像(T2WI)と拡散強調像(DWI)を中心に解説を行う.前立腺MRIの役割は腫瘍の検出,被膜外浸潤の有無,質的診断(悪性度の評価)であり,T2強調像と拡散強調像の有用性が高く,高SNR,高コントラスト分解能,高空間分解能で撮像することが求められる.しかし,前立腺は骨盤腔内にあるため,呼吸に伴う腹壁の動きや腸管の蠕動運動によるモーションアーチファクト,直腸ガスによる磁化率アーチファクトの影響を受けやすいなどの欠点があり,これらの対策方法として腹帯による圧迫,鎮痙剤(ブスコパン・グルカゴン)の使用,そして検査前の排便や排ガスなどを行う.
T2強調像は正常箇所と腫瘍とのコントラスト分解能が重要とされ,TSE factorは8~10に設定することで,MT効果の影響を最小限にする.淡いT2コントラストを得るために強制的に縦磁化を回復させるDRIVen Equilibrium(DRIVE)は併用せず,TRを長い値,TEは100msと設定する.しかし,コントラスト重視の条件はecho spaceが長く動きに弱いため,動きに強い条件も用意しておくことが望ましい.
拡散強調像は,受信コイルの開発や3.0Tの普及などハード面の向上に伴い,高いb値を用いた撮像を可能としている.前立腺撮像に対し高b値拡散強調像の有用性は多数報告されており,PI-RADS version2においてもb≧1400s/mm2が推奨されている.高いb値の設定は病変部の検出には優れているが,SNRの低下を伴うため,ADC値の信頼性を失う事が問題となる.したがって,half-scanの併用や,b=1000とb=2000を分けて撮像することによるTEの短縮や空間分解能を調整することにより,SNRを維持する必要がある.SNRが十分に担保されているのであれば,b=0~2000のみで評価することも可能である.また,前立腺は直腸ガスによる歪みの影響を受けやすいため,バンド幅は大きく設定する必要がある.長方形FOV(RFOV)とParallel imaging(SENSE)の使用,周波数マトリクスを高くしすぎないことによってバンド幅の調整が可能である.
最後に,新しいアプリケーションである3D-Prostate-VIEWとZOOM DWIの解説を行う.前者はVariableにRefocusing Flip Angle(RFA)を変化させ,組織のT1値とT2値に応じてRFAを最適化した3Dシーケンスである.従来用いられてきたVolume ISotropic Tse Acquisition(VISTA)と比較すると,高いSNRと高コントラスト分解能の画像を取得可能となり,微小な腫瘍の検出や被膜外浸潤の評価に大いに期待される.一方,後者は局所励起を可能とし,FOVを小さくしても折り返しのない画像が得られ,歪みの少ない高分解能拡散強調像が撮像可能である.
本講演が前立腺MRI撮像技術の理解の一助となれば幸いである.