The 28th Kinki Association for Clinical Engineers

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シンポジウム

シンポジウム1
「AI×血液浄化」 ~AIによる血液浄化装置の自動化は可能か~

Sun. Oct 9, 2022 9:00 AM - 10:30 AM 第1会場 (Zoom)

座長:川崎 路浩(神奈川工科大学)

[SY1-2] 血液浄化でAIが導入された世界

*片山 雄貴1 (1. 日機装株式会社)

昨今注目されているAI(Artificial Intelligence)は,医療への応用が進んでいる.特に画像診断での発展は目覚ましく,診断時の検出率向上が期待されている.本技術における特徴はグルーピングであり,AIが判断要素の抽出・仕分け・判断を行う.透析治療では患者様ごとに緻密な治療(至適治療)が要求されるため,AIにとって難しい分野とも思われる.しかし,本邦の透析患者数は34万人に上り,膨大に蓄積された治療データが存在する.その情報を解析し,支援するAIを組み込むことで,透析装置が今後どのように進展・変化していく可能性があるのかを考えた.

①次世代医療機器との連携
治療間における体組成変化(体重,血圧,食事情報など)をウェアラブルデバイスで検出し,透析システムに通知することで治療間の変化を次治療にフィードバックする.これにより医療従事者の知見と経験で総合的に決定されてきた治療条件をAIでサポートする.
加えて,電子カルテに連結させることで新たな価値を創出可能と考える.集積データを過去・現在にわたりAI解析することで高精度な治療条件(除水量や除水速度,透析時間,投薬情報など)の提示が可能となる.

②透析治療の安定化と対処誘導の提供
透析装置に搭載しているモニタリング機器から得られる情報と蓄積された治療情報をAIが解析し,血圧低下の事前予知や血圧低下時の補液自動注入が提供可能になる.
その他にも透析治療中に装置が警報発報した場合の対処において,警報を分析し最適な対処方法のナビゲーションを行うことも可能となり,医療事故の抑制や対処策の提案,透析治療の更なる自動化促進が進むと考えられる.

③透析装置保全・ダウンタイムの低減
透析装置は様々な消耗品やセンサ,機械部品から構成されているが,それら構成機器の稼働状況や故障履歴など情報・履歴解析から,故障前に部品交換の提示が可能となる.

以上を実現するには解決しなければならない課題も多い.個人情報を含むビッグデータの管理やセキュリティ構築,症例が少ないケースへの対応,AIがデータ解析して答えを導き出すための必要情報の検討などがある.これらの課題解決には,医療従事者の意見も取り入れた綿密な検討や,法律への対応が必要と考えている.それら困難を乗り越えた先に,透析装置の更なる自動化や治療の安全性向上といったメリットを提供できると考えている.