第28回近畿臨床工学会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム2
各専門領域での業務拡大に向けた将来展望 CEの伸びしろについて

2022年10月9日(日) 14:10 〜 15:50 第1会場 (Zoom)

座長:小笹 真(第二冨田クリニック)、野村 知由樹(医療法人医誠会都志見病院)

[SY2-5] 在宅血液透析(HHD)における臨床工学技士(CE)の業務と役割 ~The CE plays a pivotal role in HHD~

*古澤 敦志1 (1. 医療法人社団 富田クリニック)

日本透析医学会の2020年末の統計調査によると慢性透析患者数は347,671人,そのうちHHD患者数は751人,全透析患者の約0.2%である.HHDは十分な透析量の確保が可能で,透析スケジュールの自由度が高く社会復帰に有効な治療法であるが,自己穿刺や機械操作など技術の習得・介助者の必要性・精神的負担など様々な理由により,わが国の普及率は低い.一方滋賀県のHHD患者数は38人,県下の全透析患者の1.14%を占める.当院では2004年来36名がHHDに移行,現在22名を管理している.当院でのHHDにおけるCEの役割は,機器管理のみならずHHD移行訓練時の患者・介助者指導,維持期の患者宅への家庭訪問,定期メンテナンスなど多岐にわたる.今回,HHDにおいてCEが関わる業務について当院の現状を紹介し今後の役割を考察していきたい.
 移行訓練期は,自己穿刺や透析準備から終了までの機器操作,トラブル時の対応などの機器関連の指導が中心となる期間であるが,この期間は医療者と患者・介助者との信頼関係を構築するための重要な期間でもある.当院では期間中, CEないし看護師スタッフ一人が透析毎に付きっ切りで担当して患者・介助者とコミュニケーションを積極的に取り,“なんでも話せる”関係を築く.機器関連の工学的な知識や技術を指導する際には年齢など背景の異なる患者・介助者に合わせた方法や対応が必要である.
 維持期では,定期メンテナンス, 患者宅への家庭訪問などが中心となる.メンテナンスで機器異常の徴候を発見しトラブルを未然に回避することは勿論,機器周辺の環境や患者・介助者の関係性などの現状をメンテナンス時に把握し他職種と情報共有することも重要な役割となる.当院ではメンテナンスの頻度は月1回以上が妥当であると考えている.
 原則非医療者である患者・介助者がより簡易に安全に扱えるようなHHD専用機器の開発や現行機種ごとの統一したマニュアルの作成や公開,CEによるメンテナンスの標準化が為されれば今後HHD普及の一助になるかもしれない.
 今後,遠隔管理やAIシステムのHHDへの活用など,より新しい技術がHHDへ導入され,更にCEの役割は大きくなると思われる.これまで以上にCEがチーム医療としてのHHDに他職種と協力して役割を果たしていくことが重要であると考える.