第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-02] 一般演題(運動器②)

2022年7月3日(日) 12:35 〜 13:20 会場4 (10階 1009会議室)

座長:都留 貴志(市立吹田市民病院)

13:05 〜 13:15

[O-02-4] 左踵骨骨折術後、足部・足関節機能改善に着目した1症例~歩行獲得・復職に向けて~

杉原 優輝, 酒井 宏介, 井口 奈保美, 東山 学史, 花崎 太一 (大阪回生病院リハビリテーションセンター)

キーワード:踵骨骨折、足部機能

【症例紹介】
今回、足場作業中に転落し左踵骨骨折と診断された60歳代男性を担当した。X線よりベーラー角0°、Essex Lopresti分類は舌状型と診断。当院にて骨接合術(K-Wire固定)を施行。術後28日より関節可動域練習(以下ROM練習、内外返し禁止)開始。術後42日よりROM練習、荷重ともに制限なしとなる。職業は塗装業。復職を希望しておりカナダ作業遂行測定(以下 COPM)では歩行に関する内容を聴取。復職には梯子昇降動作が必須であり、歩行動作獲得とともに足部・足関節に着目し治療を展開。その結果、動作・COPMにおいて改善が得られたため報告する。

【評価とリーズニング】
初期評価を独歩開始時(術後53日)、最終評価を初期評価から4週後(術後81日)とした。COPM(重要度・遂行度・満足度の順に表記)では痛みなく歩けるようになる(10・1・1)を聴取。ROM測定(右/左、単位°)背屈15/5、外返し10/0、 距骨下関節回内10/0、母趾伸展65/60。徒手筋力検査(以下 MMT、右/左)足関節底屈5/2、外返し5/3、内返し5/3。触診による筋緊張検査では左足部外・内在筋の過緊張を認めた。足部周径(足長中央、右/左)23.5㎝/24.5㎝、Foot Posture Index(以下FPI、右/左)+2/-4と左後足部軽度回外を呈した。疼痛評価Numerical Rating Scale(以下NRS)では左LR~MStに足関節前面と外果周囲に6を認めた。10m歩行は15.85秒、24歩。片脚での爪先立位保持時間(右/左)6.0秒/1.7秒。歩行では前額面状においては左LR~TStに左股関節外転、足関節軽度回外位を呈しており、矢状面状では左MSt~TStに体幹前傾、ヒールオフの遅延を認めた。
歩行における問題点として、左足関節の疼痛、左足関節背屈・距骨下関節回内ROM制限による小趾側荷重の不足を認めた。また下腿三頭筋の筋力低下に加えてアライメント評価から踵骨回外位を認め、前足部・母趾側荷重が困難であり、これらより左立脚期短縮に至ったと推察した。

【介入と結果】
治療は長・短腓骨筋を中心に過緊張筋に対して筋徒手療法を実施し、ROM改善や疼痛の軽減を図った。足部アライメント不良に対してテーピングやアーチパッド等の装具療法を行った上で、前足部・母趾側荷重を促すように運動療法を実施。
最終評価ではROM左足関節背屈10、外返し5 、距骨下関節回内5。MMTは左足関節底屈2+、外返し4、内返し4。過緊張筋の軽減、FPIは-1と後足部回外は改善、NRS2、片脚爪先立位3.0秒。10m歩行は9.76秒、16歩と改善。COPMは10・7・7と改善を認めた。結果、歩容の改善に繋がった。

【結論】
本症例はベーラー角、骨折の分類からアライメント不良や疼痛の慢性化が予測された。そのためテーピングやアーチパッドによる装具療法と早期より疼痛管理に着目した介入を実施したことで歩行動作の改善、COPMの向上に繋がったと考えられる。