第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-03] 一般演題(基礎・スポーツ①)

2022年7月3日(日) 12:35 〜 13:35 会場6 (12階 特別会議場)

座長:西下 智(リハビリテーション科学総合研究所)

12:35 〜 12:45

[O-03-1] 一回換気量の増加に対する呼吸音の変化

住吉山 健太1, 大野 直紀1, 高瀬 裕佳1, 小野 秀文2 (1.地方独立行政法人 りんくう総合医療センターリハビリテーション技術科, 2.地方独立行政法人 りんくう総合医療センターリハビリテーション科)

キーワード:呼吸音、1回換気量

【背景と目的】
呼吸器疾患の患者の理学療法評価では、運動前後や姿勢変換の違いによる呼吸音の変化を評価する場面が多くみられるが、一回換気量の変化は呼吸音も併行して変化すると経験則で判断していることが多い。しかしながら、変動する一回換気量の変化が、呼吸音の変化や聴診部位の違いによる変化は十分に明らかにされておらず、理学療法介入の効果判定に一回換気量の変化が影響しているのかが不明である。そこで、本研究の目的は、一回換気量の変化に対する上肺野および下肺野の呼吸音を定量化し、一回換気量と呼吸音の動的な変化を明らかにすることである。
【方法】
被験者は、整形外科的、神経学的障害の既往歴を持たない成人10名(年齢: 25±4歳,男性:6名, 女性:4名, 身長:1.66±0.15m,体重: 55.5±14kg)とした。一回換気量の設定には、被検者は端坐位姿勢で呼気ガス分析を用いて換気量を測定し、安静時一回換気量を100%と定義して150%、200%、250%、300%の5条件の一回換気量とした。呼吸音の測定には電子聴診器(3M社製)を使用し、一人の測定者に限定して記録して検者内誤差Intraclass correlation coefficients(ICC1,1)を求めた。呼吸音分析は、録音したデータを音響編集ソフトPraatに取り込み1呼吸ずつに区分し、それを音響分析ソフトAudacityを使用して周波数毎の音圧レベル(dB)を数値化した。また、数値化した音圧レベルの平均値を求め、その平均値の標準偏差2.5以上あるいは以下の音圧レベルを、ノイズ処理のため削除した。統計学的解析には、各換気量条件における上肺野および下肺野の呼吸音の変化を反復測定による一元配置分散分析で比較した。事後検定は、Dunnett検定を用いた多重比較検定を行った。なお、有意水準は5%とした。
【結果】
聴診器による純音の繰り返し測定(n=8)による検者内誤差(ICC1,1)は0.995であった。一元配置分散分析の結果、一回換気量増加に伴う呼吸音の変化は、上肺野のみ主効果を認めた(p<0.05)。その上肺野の呼吸音の増加は、安静時の一回換気量に対して150%条件(5.6±1.74%, p<0.01)、200%条件(6.6±2.17%, p<0.01)、250%条件(10.1±1.24%, p<0.01)、300%条件(9.3±1.54%, p<0.01)のすべての換気量条件で増加を認めた。
【結論】
一回換気量の増加に対して、下肺野は呼吸音の明らかな違いはなく、上肺野のみ呼吸音の増加することが確認された。これは、安静時の一回換気量が運動前後や運動中、背臥位から端坐位などの姿勢変化で生じる一回換気量の変化が、下肺野の聴診所見では評価出来ない可能性が示唆される。その一方では、上肺野は安静時の150%条件の比較的少ない換気量の増加であっても、呼吸音に反映されていたことから動的指標としては上肺野の聴診所見が優れていることが示唆された。