第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-03] 一般演題(基礎・スポーツ①)

Sun. Jul 3, 2022 12:35 PM - 1:35 PM 会場6 (12階 特別会議場)

座長:西下 智(リハビリテーション科学総合研究所)

12:45 PM - 12:55 PM

[O-03-2] 投球時のインターナルインピンジメントを呈する野球選手に対し、投球フォーム・機能改善及び再発予防を図った症例

西村 快, 山口 元太朗, 濱田 太朗, 安田 真幸 (おおさかグローバル整形外科病院リハビリテーション科)

Keywords:インターナルインピンジメント、投球障害

【症例紹介】
本症例は、右肩関節唇損傷と診断された硬式野球部(右投げ内野手)の高校三年生男子である。症状は高校二年生時より出現し、半年後に当院受診、理学療法介入開始となった。主訴は投球時Maximum External Rotationでの右肩上方痛である。ニードは投球時の疼痛改善・再発予防とし、肩周囲・股関節機能及びフォーム改善を行った。
【評価とリーズ二ング】
介入2カ月より本発表者が担当し、2カ月時点で通常投球時の疼痛は消失していた。しかし、ゴロ捕球からの投球では右肩上方痛を認めた。疼痛はNumerical Rating Scale(以下NRS)を用い、結果は4点であった。画像所見ではSLAP損傷typeⅡを認めた。関節可動域検査(右/左:単位°)は、2nd内旋25/40,3rd内旋0/20,2nd外旋110/105(臥位肩甲骨固定),120/120(座位肩甲骨非固定),130/130(座位胸椎伸展位)であった。股関節の可動域は、屈曲100/100,内旋25/30,外旋35/35,SLR60/60,であった。モービィによる徒手筋力測定(右/左:単位N)は、2nd内旋85/105,2nd外旋72/93,3rd内旋75/96,3rd外旋63/94,肩甲骨内転・下制68/73,であった。関節可動域検査から右肩甲骨後傾・胸椎伸展不足による肩関節外旋制限を認めた。そのため、投球時の肩甲上腕関節の外旋ストレスが増大し、疼痛が生じたと推察した。また、股関節の可動域低下や捕球時の骨盤後傾位により上行性運動連鎖による不良姿勢が生じたと推察した。
【介入と結果】
週1回介入を1か月間行った。介入は肩甲骨・胸椎のストレッチ、腱板・肩甲骨周囲筋のトレーニング、股関節のストレッチに加え、骨盤コントロール練習を行った。介入後の関節可動域は2nd外旋130/125(座位肩甲骨非固定),2nd外旋145/140(胸椎伸展位),股関節屈曲110/110,内旋35/35,外旋40/40,SLR70/70,徒手筋力測定(右/左)では、2nd内旋118/135,2nd外旋102/124,3rd内旋103/125,3rd外旋98/110,肩甲骨内転・下制92/99,NRSは0点と改善し、捕球から投球動作の改善も認めた。
【結論】
肩甲骨・胸椎の介入後に疼痛が改善した要因は、投球時の肩甲上腕関節へのストレス減少が考えられる。股関節のストレッチ、骨盤コントロール練習後に投球時の肩甲骨後傾・胸椎伸展が向上した要因は、骨盤後傾位が改善し、運動連鎖による投球動作が改善したためと考えられる。本症例を通し、インターナルインピンジメントの改善・再発予防には肩周囲の機能改善による疼痛改善だけでなく、ポジション特性を考慮した体幹・下肢の機能改善が必要であると考えられた。