第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-03] 一般演題(基礎・スポーツ①)

2022年7月3日(日) 12:35 〜 13:35 会場6 (12階 特別会議場)

座長:西下 智(リハビリテーション科学総合研究所)

12:55 〜 13:05

[O-03-3] 膝前十字靱帯再建術後のACL教室が術後12ヵ月の臨床成績に及ぼす影響

服部 直人, 稲田 竜太, 井上 裕貴, 森内 諒介, 谷 綾花, 安浦 優佳, 荒明 拓, 森川 裕喜, 山本 竜世, 佐藤 達宗, 出水 精次 (運動器ケア しまだ病院リハビリテーション部)

キーワード:前十字靭帯、患者教育

【背景と目的】
膝前十字靱帯(ACL)再建術前後には機能改善だけでなく患者教育が重要であり、その一環として手術方法や術後リハビリテーションの概要を説明するACL教室が報告されている。ACL教室の参加により、術後12ヵ月以内の再断裂率が非参加群より有意に低値を示したと報告されており、一部有用性が明らかになっている。当院でも臨床成績向上に向けてACL教室を開催しているが、ACL教室への参加が臨床成績に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで本研究の目的は、当院で実施しているACL教室への参加がACL再建術後12ヵ月の臨床成績に及ぼす影響を調査することとした。
【方法】
2015年4月から2020年3月の期間でスポーツ復帰を目標にACL再建術を施行し、ACL教室に参加した56例中、術後12ヵ月以上経過観察が可能であった30例 (ACL教室群:A群)と、コントロール群 (C群)として2018年4月から2020年3月の期間でスポーツ復帰を目標にACL再建術を施行し、ACL教室に参加していない238例中、経過観察可能であった183例を対象とした。A群男性15例・女性15例、C群男性72例・女性111例、手術時年齢はA群24.6±12.2歳、C群27.1±13.5歳、受傷前Tegner activity scaleはA群7.4±1.6、C群7.1±1.4であった。移植腱はA群骨付き膝蓋腱 (BTB)25例・内側ハムストリングス筋腱 (ST)5例、C群BTB139例・ST44例であった。ACL教室は、ACL再建術後の入院症例(術後2-3週以内)を対象に、年に1-3回を不定期で開催した。内容は手術方法や術後リハビリテーションの進み方、再損傷や反対側受傷などについて理学療法士がスライドを用いて講義形式で実施した。調査項目は、術後12ヵ月以内のACL再損傷数と反対側ACL損傷数、術後12ヵ月時点でのスポーツ復帰率とHop testの基準到達率(健患比90%以上)、臨床スコアとしてIKDC subjective score、Lysholm score、J-KOOS (症状、痛み、日常生活動作、スポーツ・レクリエーション、QOL)を調査し、A群とC群の2群間で比較検討した。2群の比較には、Chi-squared test(Fisher’s exact test)またはMann-Whitney U testを用いて実施し、有意水準は0.05とした。
【結果】
術後12ヵ月以内のACL再損傷数はA群1例(1.7%) C群5名(2.1%)、反対側ACL損傷数はA群2名(3.6%) C群5名(2.1%)であり、2群間に差を認めなかった。術後12ヵ月時点のスポーツ復帰率はA群86.7% C群70.5%、Hop testの基準到達率はA群86.7% C群71.1%であり、A群において有意に高値であった(p<0.05)。術後12ヵ月の臨床スコアはすべての項目において2群間に有意な差は見られなかった。
【結論】
ACL教室への参加は、ACL再損傷数や反対側ACL損傷数、術後12ヵ月の臨床スコアへの影響はなかったが、スポーツ復帰率およびHop testの基準到達率には影響を及ぼしている可能性が示唆された。術後早期からACL再建術後リハビリテーションの進め方などの全体像を情報共有するACL教室は、ACL再建術後リハビリテーションにおいて重要な患者教育であると考える。