第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-10] 一般演題(循環・切断①)

Sun. Jul 3, 2022 2:10 PM - 3:10 PM 会場6 (12階 特別会議場)

座長:尾﨑 泰(大阪府済生会中津病院)

2:10 PM - 2:20 PM

[O-10-1] 両下肢切断患者の座位バランスに着目し、移乗動作の獲得を目指した症例

垣本 聖太朗, 渡壁 利考, 松藤 勝太, 山口 勝生 (社会医療法人愛仁会井上病院リハビリテーション科)

Keywords:下肢切断、血液透析

【症例紹介】
80歳代男性、BMIは22.04 kg/㎡、透析歴2年である。併存疾患には糖尿病、末梢動脈疾患、高血圧、既往歴には慢性心不全がある。X日に下腿切断を目的に入院され、X+5日に右下腿切断、X+34日に右大腿切断、X+69日に左下腿切断を施行された。右下腿切断後から移乗動作や義足歩行を目的に介入していたが、壊死の進行により両下肢切断に至った。元々は屋内外杖歩行で日常生活は自立していた。断端部の治癒不良で両下肢切断となったため、今回は義足を作成せずに車いすでの自宅退院を目指した。
【評価とリーズニング】
初期評価(X+69日)では、関節可動域(右/左)は股伸展0/0、膝伸展-/-10°、握力(右/左)22.8㎏/19.1㎏、徒手筋力検査(以下MMT、右/左)は肩屈曲2/2、肩外転2/2、広背筋4、腹直筋3であった。断端長は右大腿が12㎝、左下腿が12.5㎝で幻肢痛は無く、断端部痛(左)はNumerical Rating Scaleで3。Functional Independence Measureは88点であった(運動53点、認知35点)。Hofferの座位能力分類の座位能力3で端坐位不可(骨盤後傾位で後方重心)。移乗はいざりが出来ず、重度介助が必要であった。端坐位保持が出来ない要因として、切断による重心位置の変化や支持基底面の縮小、関節の柔軟性低下や立ち直り反応の遅延を考えた。また、移乗時のいざりが出来ない要因として、上肢・体幹筋力の低下、プッシュアップ時に後方重心がより強くなり、下肢が浮いてしまうためではないかと考えた。
【介入と結果】
座位バランス改善とプッシュアップ時の臀部離床獲得のため、リーチ動作・体幹前傾運動・プッシュアップ等を実施した。最終評価(X+83日)では、MMTは肩屈曲・外転に変化はなく、広背筋5、腹直筋4に改善した。Hoffer座位能力分類の座位能力1(骨盤正中位での座位保持可能)に改善した。上肢・体幹の筋力増強及び座位バランスの改善により、端坐位保持が可能となり、上肢でのいざり動作が可能となった。車椅子のセッティングを除き、移乗はトランスファーボードを使用し自己にて可能となった。
【結論】
今回、高齢血液透析患者で両下肢切断を施行された患者に対して、車椅子での生活を見据えて座位バランスに着目した理学療法を実施した。その結果、座位バランスの改善と上肢での臀部離床が可能になった事が、移乗動作獲得の大きな要因になったと考えられる。