第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-10] 一般演題(循環・切断①)

2022年7月3日(日) 14:10 〜 15:10 会場6 (12階 特別会議場)

座長:尾﨑 泰(大阪府済生会中津病院)

14:30 〜 14:40

[O-10-3] 厳密なリスク管理を行うことにより退院時ADL全介助レベルから屋内歩行自立した在宅重症心不全症例

大浦 啓輔1, 鬼村 優一2, 八木 佑城1, 井谷 祐介1, 菊地 泰基3, 岡田 健一郎3 (1.のぞみハートクリニックリハビリテーション部, 2.ゆみのハートクリニックリハビリテーション部, 3.のぞみハートクリニック循環器内科)

キーワード:訪問リハビリテーション、リスク管理

【症例紹介】
70歳代男性。疾患名は急性心筋梗塞によるうっ血性心不全(stageD、NYHAⅢ)、既往歴は慢性腎不全、下咽頭がん術後など。現病歴は入浴後に意識消失し心筋梗塞を発症した。左主幹部に冠動脈ステント留置術が施行されたが、左前下行枝と左回旋枝に残存狭窄を認めた。入院中何度か心不全増悪イベントを認めた。発症5ヵ月後、離床が進まずベッド上のADLだが、本人の強い希望により自宅退院となり当院の訪問診療及び訪問リハビリテーション(訪問リハ)が週3回開始された。訪問診療開始時の左室駆出率は40%、NT-pro BNP:3125pg/mlであった。夫婦二人暮らし、要介護5で訪問看護、訪問入浴、福祉用具(ベッド)、訪問リハが利用された。
【評価とリーズニング】
主訴はベッドから動けない、希望はトイレに行くことであった。 開始時の安静時バイタルサインはBP90/50mmHg、PR66bpm、SpO295%であった。頚静脈怒張、浮腫は認めず、Nohria-stevenson分類はwarm-dryであった。筋力は四肢MMT3レベルであった。関節可動域は両膝関節屈曲120度、足関節背屈0度。基本動作は起居動作重度介助、端坐位中等度介助(全身疲労感のため3分で終了)、立位重度介助であった。SPPBは0点、ADLはBarthel indexは0点、排尿は尿道カテーテル留置中、排便はベッド上全介助であった。長期臥床に伴う廃用症候群の要因が強く、運動療法による筋力の改善、洋式生活は可能と考え、 理学療法の目標を屋内歩行自立、排泄動作自立とした。しかしながら、 残存狭窄を有する心筋梗塞後の重症心不全症例であり、AHA運動療法のリスク分類によるとクラスCとハイリスク症例であるため心不全増悪と虚血症状出現を想定したリスク管理が重要であった。医師とリスク管理に関して協議し、具体的には、心不全に関して浮腫や呼吸困難感、心音・呼吸音の聴診、頚静脈怒張の観察などを行い、心筋虚血に関しては胸部症状、バイタルサインの変動、ダブルプロダクトの評価を経時的に行った。
【介入と結果】
運動療法として四肢の筋力強化運動、関節可動域運動、疲労感を確認しながら基本動作練習を実施し生活範囲を広げた。開始2週間で端坐位10分可能となり立位練習開始した。開始4週間で端坐位監視、立位軽介助で可能となったため、車いす座位練習を開始した。また座位耐久性改善のため清拭などのケアを端坐位で実施するよう訪問看護師に依頼した。開始6週間で心不全増悪を認めないため歩行器を使用した歩行練習を開始した。開始9か月で筋力はMMT4レベルに改善し基本動作能力が屋内移動独歩自立、排泄が自立し SPPB6点、Barthel index40点に改善した。この間心不全増悪なく経過、虚血症状も認めなかった。
【結論】
退院時ADL全介助の重症心不全症例であっても、在宅で厳密なリスク管理のもと訪問リハビリを行うことにより心不全増悪することなくADLが改善する可能性が示唆された。