第34回大阪府理学療法学術大会

Presentation information

Poster session

事前公開

[P-01] ポスター演題①

Sun. Jul 3, 2022 12:35 PM - 1:25 PM 会場8 (12階 12Fホワイエ)

座長:大槻 哲也(訪問看護ステーションMARE)

12:47 PM - 12:59 PM

[P-01-2] 新生涯学習制度移行に伴う部門運営方法の検討とモデル化

米元 佑太 (東大阪山路病院リハビリテーション科)

Keywords:新生涯学習制度、部門運営

【背景と目的】
2022年度から日本理学療法士協会の教育システムは新生涯学習制度に移行した。新生涯学習制度では最低5年間の初期研修を履修することで、登録理学療法士の取得を目指すこととなる。登録理学療法士には5年毎の更新制が採用されている。この変化は理学療法士協会員個人だけではなく、理学療法士が所属する組織運営にも何らかの影響が生じる可能性がある。本報告の目的は新生涯学習制度の導入が理学療法士の所属する組織運営に与える影響を検討し、影響と変化の仮説モデルを提示することにある。
【方法】
新生涯学習制度と部門管理それぞれについて理解があると考えられた4名の理学療法士に対して、「リハビリテーション部門の組織運営に新生涯学習制度がどのような影響を及ぼすか」という観点から、非構造化インタビュー法を用いたデータ収集を行った。得られたデータはカテゴリーごとに分類し、カテゴリー間の関連を整理した。
【結果】
新生涯学習制度を導入することで「新卒・中途採用に関する非導入組織との差別化」「院内教育システムとの連携による継続的な学習体制の構築」「離職率の低下による業務効率・収益性の確保」「組織外活動の推進による市区町村士会との連携」などのカテゴリーが作成でき、それらの結果、「管理コストの低下」「医療の質的向上」「FIM利得、在院日数、従業員満足などのアウトカム指標の改善」につながるという仮説モデルが生成できた。
一方で、導入にあたっての懸念事項として、「前期D項目および後期E項目での指導・管理側のコストの増加」「作業療法士、言語聴覚士などに代表されるリハビリテーション部門内他職種の教育体制との齟齬」「出産、育児、当人の健康状態の変化、介護など多様な生活背景を抱える理学療法士のキャリア開発に不利益が生じない体制の構築が必要であること」「小規模施設など、異なる組織形態で最適化された運用の検討が必用であること」が抽出できた。
【結論】
部門運営に携わる理学療法士は、一定の懸念事項がありながらも、自組織の人員特性を把握した上で新生涯学習制度の活用を推進することで、良好な組織アウトカムが確保できる可能性があるというモデルが示された。
新生涯学習制度移行後に、今回生成した仮説モデルで提示した組織の変化が生じていることの検討することで、新制度移行に関する効果検証および提示を行う必要があるだろう。また、今回用いた非構造化インタビュー法は、対象者の人数が少なく、外的妥当性の確保が困難なこと、透明性や再現性が低くなり高い信頼性は期待できないことに留意が必用である。