第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

ポスター 一般演題

事前公開

[P-02] ポスター演題②(卒業研究演題)

2022年7月3日(日) 14:10 〜 15:10 会場8 (12階 12Fホワイエ)

座長:田中 貴広(藍野大学)

14:34 〜 14:46

[P-02-3] 前十字靭帯再損傷と恐怖心の関連 【卒業研究】

西澤 和1,2, 秋末 敏宏1, 上田 雄也1 (1.神戸大学医学部, 2.大阪大学 医学系研究科)

キーワード:ACL再建術、ACL再損傷

【背景と目的】膝前十字靭帯(ACL)損傷はスポーツ外傷を代表する重篤な膝機能障害をもたらす疾患である。さらにその再損傷率は高く、再損傷の予防は喫緊の課題であるといえる。再損傷に関連する因子として疼痛に対する恐怖心と動的アライメントの関連および動的アライメントと再損傷の関連についてそれぞれ調査した研究はあるが、実際に恐怖心と再損傷の関連を調査した研究は少なく、結論は得られていない。先行研究では、同側ACL再損傷者は非再損傷者と比較して恐怖心が有意に高かったと報告しているが、対象者が少ないうえ、若くて活動的なアスリートに限られている。そこで本研究では、ACL 再建術後にスポーツに復帰した患者において、術後1年時点の恐怖心とACL再損傷の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】2015年3月以降に初回ACL再建術を受け、スポーツに復帰した患者を対象とした。対象者の基本的な身体データ、手術記録、追跡期間、受傷前のスポーツ活動状況、術後1年および2年でのスポーツへの復帰状況、術後1年のTegner Activity Scale(TAS)、術後1年の短縮版Tampa Scale for Kinesiophobia(TSK-11)および術後1年以降に認めた再損傷(同側および対側損傷)について抽出した。対象を再損傷群と非再損傷群に分類し、年齢、性別、TAS、術後1年の復帰率およびTSK-11についてMann-Whitney U検定またはカイ二乗検定を用いてそれぞれ比較した。また、TSK-11については、層別解析として18歳未満、18歳以上の患者それぞれにおいても同様の解析を行った。
【結果】対象者126名のうち、18歳未満で10名、18歳以上で4名、計14名(11.1%)が術後1年以降に再損傷を認めた。再損傷群は非再損傷群より年齢が有意に若く(15.5歳[14.3, 17.5] vs 19.5歳[16.0, 30.5], p = 0.001)、術後1年のTASが有意に高かった(9[8, 9] vs 7[6, 9], p = 0.002)。TSK-11について、対象者全体および18歳未満の患者においては再損傷群と非再損傷群の間に有意差を認めなかった(対象者全体:15.5[13.3, 20.8] vs 17.0[14.0, 22.0], p = 0.48、18歳未満:19.5[14.5, 21.8] vs 16.0[14.0, 20.0], p = 0.39)。一方、18歳以上の患者では再損傷群が非再損傷群より術後1年時点のTSK-11が有意に低かった(13.0[12.5, 13.5] vs 17.5[14.0, 23.0], p = 0.03)。()内は、中央値[四分位点]で記載。
【結論】スポーツに復帰していた18歳以上の患者において、術後1年以降にACLを再損傷した者は再損傷していない者に比較して、術後1年時点における疼痛に対する恐怖心が低かった。再損傷予防に向けては身体的側面に加えて、心理的側面の評価にも目を向ける必要性が示唆される。