第34回大阪府理学療法学術大会

Presentation information

Poster session

事前公開

[P-03] ポスター演題③

Sun. Jul 3, 2022 3:15 PM - 4:15 PM 会場8 (12階 12Fホワイエ)

座長:永井 佑典(大阪府済生会千里病院)

4:03 PM - 4:15 PM

[P-03-5] 脳出血の既往がある大腿骨頸部骨折を呈した症例の歩行再建の経過

濵川 侑未, 吉尾 雅春 (千里リハビリテーション病院理学療法士)

Keywords:既往歴、転倒

【症例紹介】
70歳代女性。転倒により右大腿骨頸部骨折、右橈骨遠位端骨折受傷。前者は受傷6日後に骨接合術(ハンソンピン)を施行、後者は保存療法。術後29日に当院転院。9年前に脳出血発症。骨折前ADLは居室内杖歩行、屋外車椅子使用。装具は作製済みも使用しておらず自宅内で頻回転倒歴あり。
【評価とリーズニング】
MMSE:25/30点。FIM:69点(運動42点認知27点)。BRS:右上下肢Ⅴ。踵膝試験陽性。感覚障害はなし。ROM:(右/左)股関節屈曲95°/115°、内旋10°/25°、膝関節伸展0°/-5°、足関節背屈0°/5°。5段階筋力評価により股関節屈曲3/4、股関節外転3/4、膝関節伸展3/4、足関節背屈2/4。立位姿勢はオルトップLH装着にて体幹前傾、体幹右軽度側屈、右骨盤挙上、左右股関節外旋位、右膝関節内反位。BBS:4/56点。歩行はオルトップLHにて、右立脚期の過度な右骨盤側方移動により股関節内転接地、また筋緊張亢進により膝関節伸展位、足関節底屈位、右足部クリアランス低下を認めた。以上の病態より既往の脳出血は視床外側核を中心としたものと推察され、運動麻痺に加え、運動失調および姿勢定位障害の影響が生活期での頻回の転倒に繋がり今回の受傷に至ったものと考えた。
【介入と結果】
入院当初は股関節周囲筋賦活を行うため長下肢装具(KAFO)での荷重練習を行った。手摺りの環境で非麻痺側への荷重練習を行った。結果右骨盤側方移動、股関節外旋位の改善を認めた為、入院2カ月目から本人の希望により以前作製したものと同じオルトップLHと4点杖での立位練習、歩行練習を行った。しかし麻痺側立脚での膝関節内反、足関節内反制御不良であり右足部クリアランス低下を認めた為、直ちにシューホーンブレース(SHB)での歩行練習へと介入方法を見直した。結果入院3カ月目には右足部クリアランスの改善を認め、SHBと4点杖にて居室内自立。病棟内トイレは見守り歩行で可能となった。その後訪問リハを導入し自宅退院した。
退院時評価はFIM:105点(72点/31点)、BRS著変なし。踵膝試験陽性。ROM:股関節屈曲110°/125°股関節内旋20°/25°。立位姿勢は右骨盤挙上、膝関節内反位の改善を認めた。BBS:24点。TUGは2ヶ月目では1分21秒、3ヶ月目では1分15秒となった。
【結論】
今回、脳出血の既往がある大腿骨頸部骨折の症例において右不全麻痺、失調症状、姿勢定位障害が残存していることで骨折されたと考えられる患者に対しKAFO、SHBでの立位、歩行アプローチを行ったことにより歩行再建に至った。治療を行う際に現病歴に対する治療も大切であるが、既往歴による影響にも目を向けてプログラムを検討していく必要があると考えた。また回復期と生活期での連携を重要視していかなければならないと考えさせられた。