第34回大阪府理学療法学術大会

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査読者推薦演題

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[SO-01] 【当日】査読者推薦演題①

2022年7月3日(日) 14:10 〜 15:10 会場1(LIVE ch1) (10階 1003会議室)

座長:杉山 恭二(大阪公立大学)

14:25 〜 14:40

[SO-01-2] COVID-19に伴うウイルス誘発性筋炎により著明な筋力低下を呈したが集中的な回復期リハビリテーションにより筋力向上及び独歩獲得に至った一症例

山中 大河, 吉田 啓志, 﨑山 誠也 (千里中央病院理学療法科)

キーワード:COVID-19、ウイルス誘発性筋炎

【はじめに】
COVID-19に伴う臨床症状の一つに、ウイルス誘発性筋炎による筋力低下が報告がされている。しかし、筋炎発症後の筋力や歩行能力に関するリハビリテーション(以下、リハビリ)の回復経過を追った報告はない。今回、COVID-19に伴うウイルス誘発性筋炎の疑いにより著明な筋力低下を呈し歩行が不可能であったが、集中的な回復期リハビリにより、筋力向上、独歩獲得が可能となった症例を報告する。
【症例紹介】
症例は70歳代男性である。発症前は日常生活動作全自立であった。X病日にCOVID-19と診断。X+1病日に気管挿管し人工呼吸器管理となり、X+12病日抜管。抜管後、MMT 1レベルの著明な筋力低下認め、精査の結果、筋MRIにてCOVID-19に伴うウイルス誘発性筋性の疑いとなり、X+85病日リハビリ継続目的で当院回復期病棟入院となった。
【理学療法評価】
当院入院時は、筋力:MMT2~3レベルであり、筋力は発症時と比較し改善傾向であったが、等尺性膝伸展筋力:0.12/0.13kgf/kg、握力:6/8kgであり、四肢に著明な筋力低下を認めていた。また、大腿周径(膝蓋骨上縁10cm):33.1/33.3cm、外側広筋筋厚(エコーにて評価):6.6/8.0mmであり、筋委縮を認めていた。日常生活動作はFIM:68点(運動44点、認知24点)であり、起立:重度介助、歩行:平行棒内中等度介助、歩行後はSpO2 90%台前半まで低下を認めていた。
【介入と経過】
介入頻度と内容は、1日2時間以上の理学療法および作業療法を週7日行い、筋力増強運動と有酸素運動を主に行った。筋力増強運動は、自重に抗する四肢の運動から開始し、徐々に重錘ベルトや徒手的な反復抵抗運動を行った。有酸素運動は、エルゴメーター、連続歩行を行った。病棟移動は、X+105病日より歩行器歩行、X+124病日に独歩となった。
【結果】
退院時(X+146病日)は、筋力:MMT4~5レベル、等尺性膝伸展筋力:0.38/0.38 kgf/kg、握力18.0/17.5kgであり、四肢の筋力向上を認めた。また、大腿周径:36.8/36.4cm、外側広筋筋厚:9.1/10.0mmとなり、筋肥大も認めた。FIM:118点(運動88点、認知30点)、歩行は独歩にてSpO2の低下なく連続150m獲得した。
【結論】
今回、COVID-19に伴うウイルス誘発性筋炎により著明な筋力低下を呈した症例に対し、集中的な回復期リハビリを行った結果、筋力向上、筋肥大を認め、独歩獲得に至った。筋炎発症後の筋力向上に必要な介入については、歩行が可能である患者でも1日30分、週5回の筋力増強運動および有酸素運動を3カ月行う必要があると報告されている。一方で、本症例は歩行に介助を要していたのにも関わらず、回復期リハビリ開始後約2カ月で筋力向上を認め、独歩獲得に至った。すなわち、COVID-19に伴うウイルス誘発性筋炎後の筋力低下に対しては、歩行に介助が必要な状態であっても、集中的な回復期リハビリが短期間での筋力向上、歩行能力の改善に有効である可能性が考えられた。