第34回大阪府理学療法学術大会

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selection oral session

事前公開

[SO-03] 【事前公開】査読者推薦演題③(生活期)

座長:浅田 史成(大阪労災病院)

[SO-03-3] 自己効力感の向上により活動量の向上に繋がった慢性心不全の一症例~医学的モデルからストレングスモデルへ~

堀井 啓介1, 高見 武志2, 藤川 薫2 (1.医療法人春秋会 城山病院訪問看護ステーション, 2.医療法人春秋会 城山病院リハビリテーション科)

Keywords:ストレングスモデル、慢性心不全

【症例紹介】
87歳,女性,夫(89歳,要介護状態)と二人暮らし。ADLは全自立。家事は週2回のヘルパー利用にて行っている。心不全の診断あり,訪問リハビリテーション開始し3年経過。利用開始4年目から担当となった。【評価とリーズニング】
初期評価時,徒手筋力検査(以下MMT)は上下肢3,体幹屈曲3,体幹伸展4。四肢体幹ともに著明な可動域制限なし。TUG:16秒50(16歩),CS-30:8回,握力(R/L):12.2Kg/10.8Kg,ミネソタ心不全質問紙:26点。訴えは「もうあかんか、いつ迎えに来るんやろか。」と消極的な発言ばかり。活動範囲はほぼ自宅内で外出は受診やゴミ出しのみ。自主練習はほとんど行っておらず,近隣との関わりはゴミ出しの際に話しかける程度。
病状や高齢から労作時の循環不全が生じ活動性の低下、QOLの低下が生じており,活動性の低下から廃用症候群を来し全身性の筋力低下を生じていると考えた。
【介入と結果】
担当者変更後5ヶ月目から,筋力低下や筋持久力低下に対する運動療法といった医学的モデルの介入から,本人の強みを活かしたストレングスモデルを強調した介入を開始した。
まず高齢で心不全である状態で家事動作等行えているということが本人の強みであることを伝え,身体機能評価に対してImpairmentを提示せず,現状の身体機能を保てていることを本人の強みとして強調する。加えて,本人と「死」をテーマに話を行い,どうありたいかといった内容の話を行い,逆算的に目標設定を行い,その目標に向けて支援をしてくといった関わり方へ変更した。具体的には,「買い物に行って夫の好きなものを作ってあげたい。」との訴えに対し,「700mの屋外歩行の持久性獲得」を目標に挙げた。スーパーまでの距離の中で小目標をたて,リハビリ介入中に歩行練習を行い,屋外歩行持久性の評価とfeed backを1ヶ月間行なった。
最終評価時,MMT下肢3,体幹屈曲3,体幹伸展4。四肢体幹ともに著明な可動域制限は認めない。TUG:14秒87(16歩) CS-30:11回 握力(R/L):12.0Kg/10.8Kg ミネソタ心不全質問紙:35点。自主練習は毎日行うようになり,「運動してたからよくなったんかな。この年でもやれば良くなるんやな。」など積極的な発言も認めた。また,活動範囲は主に自宅内ではあるが,自主練習はほぼ毎日行うようになった。また,自主練習として屋外歩行を行うようになり近隣との関わりも増加した。
【結論】
本症例では,医学的モデルでImpairmentを提示することで本人の身体に対するマイナスイメージを増大させるに過ぎなかった。ストレングスモデルを用いて本人の強みを強調することで,身体に対するマイナスイメージを払拭させ自己効力感が向上した。
また、「死」をテーマに対話をすることで,本人とセラピスト間の心理的な距離感が縮まり,信頼関係を築く事ができたと考えられる。その一連のプロセスの結果,活動性の増大やQOLの向上につながったと考えられる。