第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

教育講演

教育講演1「with/postコロナ時代の医療のあり方を考える」

2022年11月5日(土) 11:15 〜 12:00 第1会場 (3階 メインホール)

[教育講演1] with/postコロナ時代の医療のあり方を考える

神野 正博 (社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長)

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 新型コロナウイルス感染症は、医療提供体制を大きく変化させた。それは、これまでも医療者や患者がうすうす感じていた、あるいは考えたくはなかった不都合を現実の世界に引き込んだものだったかもしれない。すなわち、「未来が早くやってきた」と、理解すべきものかもしれない。
 われわれの置かれている立場は、“ 大きな荷物を抱えながら、大きな嵐の中にいる” と言っていいだろう。「大きな荷物」とは、急速に、かつ確実に進む少子高齢化、人口減といった社会構造の変化だ。そして、「大きな嵐」とは、新型コロナウイルス感染症ばかりではなく、暴力で世界の秩序を変えようとするロシアによるウクライナ侵略や近年特に激甚化し多発する実際の災害など、われわれの価値観が大きく変わる事象であろう。
 高齢化は疾病構造の変化と医療へのアクセスの変化を生んだ。これからの疾病構造は、決してこれまでの医療提供体制とはマッチしないものかもしれない。また、少子化は働き手の減少をもたらす。そのために、働き方改革や生産性(効率性)向上のための手段としてのDX を否応なく求める。コロナ禍は、密接を回避するための非接触、密集を回避するためのリモート、密閉を回避するためのバーチャルを求める。さらに、ウクライナ侵略以来、原材料・エネルギー価格は高騰し、効率化の圧力はさらに大きくなる。また、医療機関、企業のBCP も自らの事業の持続可能性のために必須となる。
 これらをかけ合わせながら、日本の医療提供体制のあり方を考えるソリューションは“Integration 統合” 戦略と心得る。すなわち、「生命」を護る医療と「生活」を支援する介護と日常を「人生」というキーワードの下で統合する。それによって、医療、介護、福祉制度に加えて生活支援サービスを統合する。そこでは、患者・利用者にかかわるすべてのステークホルダーの情報を共有する気持ちと戦略が必要だ。それは、「お薬手帳」を軸に患者本人と医療機関や薬局の情報を統合してきた形の延長として、PHR( Personal Health Record )の導入によって成し遂げられるのではないだろうか。
 演者の法人、けいじゅヘルスケアシステム(社会医療法人董仙会+社会福祉法人徳充会)で進める統合戦略とPHR 導入の実際を提示したい。