第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー5

2022年11月6日(日) 12:00 〜 13:00 第1会場 (3階 メインホール)

座長:森本 耕三(公益財団法人結核予防会 複十字病院 呼吸器内科 医長)

共催:インスメッド(同)

[LS5-1] 増え続ける肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)の最新の話題

森本 耕三 (公益財団法人結核予防会 複十字病院 呼吸器内科 医長)

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 非結核性抗酸菌(NTM)は、結核とらい菌以外の抗酸菌の総称である。NTM は近年の遺伝子研究により約300 万年前に地球上に存在したと推定されており、人―人感染をきたす結核は、NTM の中から約数万年前に分化したものである。現在までに200 種以上が登録されているが、この中で約30 種程度が肺非結核性抗酸菌症(肺NTM 症)を起こすことが知られている。2014 年に行われた全国調査により肺NTM 症の罹患率は14.7/10 万と菌陽性結核のそれを超え、日本の抗酸菌症は新しい時代へ移ったことが明らかにされた。同年の有病率は110/10 万と推定されており、日本は高蔓延国状態にあると言える。本邦の肺NTM 症の約90%がMAC 菌(M. avium とM. intracellulare の呼称)による肺MAC 症であり、特に中高年の瘦型の女性を中心に増え続けている。日常診療では検診異常、咳痰、血痰を主訴に来院されることが多い。診断即治療とはならないが、難治化の主たる要因である空洞病変や気管支拡張などの破壊性病変が拡がる前に治療導入を行うことが望ましい。経過観察中には患者さんに疾患理解を深めてもらうよう指導を行う。長らくクラリスロマイシン、エサンブトール(EB)、リファンピシンによる3 剤連日療法が推奨されてきたが、RFP による消化器症状やEB によるアレルギー、視神経炎などの副作用頻度が高いうえ、治療期間は少なくとも菌陰性化1年以上とされており、治療期間を十分に満たしている割合は低いことが問題となっている。アジスロマイシンを使った週3 回療法は、連日療法による副作用頻度を軽減するため、空洞の無い軽症の結節気管支拡張型に推奨される。有空洞や破壊性病変の強い症例では、初期からアミノグリコシドを加えた4剤治療を行う。吸入リポソームアミカシン(ALI)は、はじめて肺NTM 症治療のために開発された薬剤であり、治療開始6か月以上培養陽性が持続する肺MAC症が適応となる。点滴投与に比較して病変局所へ高濃度で到達可能であるうえ、バイオフイルムを通過し細胞内へ到達可能である。講演では、肺NTM 症に関連する話題を中心にお話させて頂く予定である。