第16回日本薬局学会学術総会

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ランチョンセミナー

ランチョンセミナー8

Sun. Nov 6, 2022 12:00 PM - 1:00 PM 第4会場 (4階 411+412)

座長:津田 徹(医療法人社団恵友会霧ヶ丘つだ病院 院長)

共催:アストラゼネカ㈱

[LS8-1] COPDの現状と今後の課題―薬物療法を中心としてー

藤田 昌樹 (福岡大学病院 呼吸器内科 教授)

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 息苦しさを主訴に来院される呼吸器疾患としては、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は忘れてはいけない疾患である。COPDは患者さんの認知も乏しく、医療関係者もつい見落としてしまう疾患だが、死亡原因としては、世界的には第位を占めており、かなり大きなインパクトを与えている。本講演では、改訂された本邦でのガイドラインを軸に、現在の課題、トリプル製剤への期待を含めて、薬物療法を中心として講演を行う。
 COPDの治療としては、1)禁煙、2) 薬物療法、3) 非薬物療法がおこなわれる。禁煙はCOPDの発症リスクを減らし、疾患進行を抑制する最も効果的で経済的な方法である。受動喫煙もCOPDの発症や増悪の原因になる可能性があり、COPD患者を含め、全ての喫煙者に禁煙指導を行うべきである。薬物療法としては、ワクチン、気管支拡張薬、吸入ステロイドがあげられる。ワクチンとしては、COPD患者は呼吸器感染症の重症化を来たしやすく、死亡に至る場合もあり、インフルエンザワクチン接種や、肺炎球菌ワクチン接種を行う。気管支拡張薬として、① 短時間作用性抗コリン薬および短時間作用性β2刺激薬、② 長時間作用性抗コリン薬(long-acting muscarinic antagonist:LAMA)、③ 長時間作用性β2刺激薬(long-acting β 2 agonist:LABA)、④ LAMA/LABA 配合薬、⑤メチルキサンチンが使用されている。安定期COPDの管理では、呼吸機能、呼吸困難などの訴え、身体活動性、増悪頻度といった事を考慮して治療を考えていく。非薬物療法として、呼吸リハビリテーション、呼吸不全症例に対する酸素療法、補助換気療法などが挙げられる。
 COPDの直面している課題としては、一般市民に対する認知率の向上である。疾病の認知率が低いことが指摘されており、潜在的には500万人いる症例の20万人しか医療を受けていない。いかに医療機関へ受診していただくのが今後の課題である。COPDの治療戦略は1980年代後半から導入された大規模ランダム化比較試験結果によるevidence basedmedicineの時代となった。しかし、この結果も対象群によって異なる結果が出て、混乱をきたしている。例えば、ICSを加えることでCOPD増悪を減少させるかどうかは、サポートしているメーカーによって異なる結果が出されている。COPDに対してICSは、気管支喘息合併例中心に用いられていたが、最近ではビレーズトリ®を含むLAMA/LABA/ICSというトリプル製剤も発売され、COPD増悪を減少させる効果が指摘されている。どのような症例にトリプル製剤を用いるのか大きな課題である。また、治療として、日頃接することがない吸入薬をどのように、患者さんに教育するのかも重要な課題である。これに関しては、聴講していただく薬剤師さんの力に大きく期待している。いろいろなメーカーがそれぞれのデバイスを発売しており、どのように上手に吸入指導するのかが腕の見せ所だろう。
 以上本講演では、COPDについて、実施臨床に役立つ事項を中心に紹介していきたい。