第16回日本薬局学会学術総会

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Cグループ

Sun. Nov 6, 2022 3:10 PM - 4:00 PM ポスター会場1~3 (4階 405+406/409+410/413+414)

[P-003-C] 便秘症が高血圧患者に及ぼす影響の実態調査、および薬剤師が介入する便秘改善の取り組み

伊藤 達哉1, 安藤 誠1, 松井 洸2, 阿部 真也2, 深津 英人2, 山口 浩2, 吉町 昌子2, 立石 大介2, 野村 和彦2 (1.(株) 杏林堂薬局, 2.(株)ツルハホールディングス))

【目的】便秘下における排便時のイキミは血圧上昇を誘引し、心血管イベントのリスクを増加させる。しかしながら、高血圧患者における便秘指導の重要性は見過ごされる傾向にあり、便秘症と高血圧の関連性を示す大規模調査も殆ど実施されていない。本研究では高血圧患者における便秘症が降圧療法に及ぼす影響に関する現状を調査し、高血圧治療における薬剤師による便秘改善指導の有用性について検討することを目的とする。
【方法】成人患者を対象としたアンケート調査を実施した。降圧剤使用者の便秘有訴率、便秘誘発性の昇圧経験、イキミ誘発性の体調変化などを確認した。さらに便秘改善を希望した患者に生活指導(食事・習慣)を実施し、再来局患者の排便状況や病院受診時の血圧推移を追跡調査した。本研究はツルハHD学術研究発表審議会の承認を得て実施した(承認番号HD2021011)
【結果】調査対象183名の患者は男女比率がほぼ均等で平均年齢は61.4歳、51%が高血圧患者であり、そのうち降圧剤使用者の便秘有訴者率は13%と判明した。また便秘症誘発性の昇圧効果が認められた患者(6%)やイキミによる体調不良を経験した患者(10%)が存在した。続いて便秘改善を希望した患者への生活指導を実施したところ、再来局した12名中7名の患者で便秘症が改善し、当該患者は生活指導前より指導後の血圧が低くなる傾向を確認した。
【考察】降圧剤使用者の便秘有訴者率(13%)は2016年度国民生活基礎調査の各年齢層の便秘有訴者率(1-10%)と比較して高く、降圧剤使用による便秘誘発の可能性が示唆される。一方、便秘時の昇圧効果や排便時の体調不良を感じた患者の存在より、便秘症が降圧療法を阻害していることも推測される。追跡調査の結果より便秘症を改善できれば降圧効果が正常に働き、血圧低下の可能性があると考えられる。そのため薬剤師は便秘症を重要な昇圧リスクとして認識し、それを防ぐための介入が必要である。