第16回日本薬局学会学術総会

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Cグループ

Sun. Nov 6, 2022 3:10 PM - 4:00 PM ポスター会場1~3 (4階 405+406/409+410/413+414)

[P-030-C] 自宅での看取りを希望された終末期がん患者のQOL維持に保険薬局薬剤師として貢献できた1例

逆井 慎吾1, 今井 英詞2 (1.みよの台薬局(株)志宝薬局 三ツ沢店, 2.みよの台薬局(株))

【目的】終末期がん患者の在宅での看取りは年々増加傾向にある。今回、在宅治療を受ける終末期がん患者の脱水症状と悪心に対して、患者の思いを聴取しながら薬剤師として支援できた事例を経験したので報告する。
【症例】A氏、80歳代、女性。夫と同居。進行性膵がん、卵巣がん尿管転移、腎瘻造設。腹背部の癌性疼痛、腹膜播種による激しい悪心、嘔吐が主訴。初回訪問時、今までの経緯や今後の治療に対する思いを聴取。前医からは十分なインフォームドコンセントがなく、不満を抱いていた。積極的な治療は望んでおらず、痛みや苦しみをできる限り軽減してほしいとの希望を聴取した。今一番つらい症状は悪心、嘔吐であり、水分は水を舐める程度しか摂取できないと話された。オピオイドのレスキュー薬も服用困難な状況であった。患者の思いや希望を医師・訪問看護師と共有し、まずは脱水症状を緩和することとなった。輸液投与により脱水症状は落ち着いたが、腹水増加に伴う嘔吐が悪化。そこで、本人に支持療法薬としてオクトレオチドがあることや、その投与方法として「携帯型ポンプを利用して持続皮下注射を行う方法」と「中心静脈栄養に直接混ぜる方法」の二通りがあることを、メリット、デメリットも含めて説明した。患者は後者での投与を希望したため、医師に薬剤情報や安定性を含めた輸液投与方法について患者の希望とともに説明・提案し、採択された。その後悪心は改善、コップ半分程度の水を飲むことができる様になり、疼痛時にレスキュー薬を内服出来るようになった。
【考察】患者の背景や思いをはじめに傾聴し、治療に関する希望を把握できたことで、医師や訪問看護師と連携し、適切な治療選択を支援できたと考えている。さらに、薬学的知見を活かして、患者に最適と思われる薬剤や投与方法を提案することで、保険薬局薬剤師も終末期のがん患者のQOL維持に貢献できると考える。